10-2
「……ってなことがあったんだよー!こさきっちひどくねー!?」
「いや、それは完全にアンタが悪いでしょ」
時間が変わって現在放課後。つまり部活だ。
犬飼は今朝、俺に鞄で殴られたことを直樹に愚痴っていたが、見事に窘められていた。
「だって!目の前に叶いそうな恋があったら冷やかしたくなるじゃんか!」
「ならない。他人が付き合おうが付き合うまいが自分には関係ないからどうでも良くない?」
確かに。俺と直樹は随分気が合うらしい。
「あ!大河だ!今日も部活頑張ろうな!」
「…………」
直樹に同意して貰えないと知ると、犬飼のターゲットは鮫島に変わったようだ。
しかし鮫島は挨拶すら交わさず無視。この前少し仲良くなったと思ったのは、気のせいだったのだろうか。
「……何あれ。相変わらず冷たい奴」
「将吾ちゃん。あんまり大河のこと、悪く言わないでやってくれ」
「はあ!?何であんな奴のこと庇う訳!?」
「庇ってるっていうか……大河にも理由があるんだと思うし」
「……!どんな理由があっても、ああいう態度はどうかと思うけど!」
「……直樹」
アイツら個人のことなので俺が首を突っ込むことでは無い。無視しようとも思ったがヒートアップしそうだったので止めに入る。
「……何、神凪先輩」
「さっきお前、他人が付き合おうが付き合うまいが自分には関係無いって言っただろ。これも、自分には関係の無いことじゃないのか?」
「……っ!!」
図星をつかれ、直樹は悔しそうに唇を噛む。言い過ぎただろうか。いや、でも会長が来る前に止めておきたかった。……あの人にバレると色々面倒くさそうだし。
「そうだよね。僕には関係無いよね」
直樹は吐き捨てるように言うと、部室から出て行こうとする。
「お前、何処行くんだよ」
「神凪先輩には関係無いでしょ。関係無いことには関わろうとしないでよ」
それはお前の信条であって、俺は違うだろ。
ああもうとにかく出て行くな。会長に色々聞かれたら面倒くさいから。
「……おや。どうしたんだい?」
しかし、俺の努力も虚しく最悪のタイミングで会長が訪れてしまった。
「直樹くん、今から部活だよ?トイレにでも行くのかな?」
「……べ、別に!何処にも行かないし!」
会長に見られていては出て行く気力も失せたのだろう。直樹は舌打ちをして、部室の自分の席へと戻った。
やれやれ。
会長が変な解釈をして、俺にまた働かせようとしなければ良いけどな。
……いや。もしかしてこれはフラグなのだろうか。
若干の寒気を覚えながら、休み明け初めての部室が始まったのであった。




