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「……じゃあ、そろそろ帰るな」
「うむ。引き止めてしまってすまなかったな!」
あの後、大した収穫も無かったし、そもそも長時間邪魔するのもどうかと思ったので、帰ることを告げる。
「コサキ!貴様なら、また我の家に招待してやっても良いのだよ!」
「あー……考えとく。またな」
「今日は本当に世話になった!また知恵の牢獄にて会おうぞ!」
……しかし、ここまで懐かれるのは正直予想外だった。
でも家に呼ばれるのは暫く遠慮しておこう。……気を遣う。
つーか知恵の牢獄って何だよ。学校ってことでいいのか?
「……うわ。結構時間経ってたんだな」
まあ、今日一日でコイツの全てが分かった訳では無いが、とりあえず山田に怪しいところは無しと会長に報告しておくことにする。
MINEを送ろうと、スマホを取り出したその時だった。
「歩きスマホは良くないぞ、部長くん」
「……!?うわ!」
至近距離から声が聞こえたかと思うと、いつの間にか隣に会長が立っている。
いつの間に……?さっきは絶対居なかっただろ。
「お疲れ様、神凪くん。せっかくのお休みなのに君には色々働いて貰っちゃったね」
「まあ、別に今日のはアンタに言われた訳じゃないですし」
「とりあえず、山田くんの様子を報告して貰おうかな」
「いや、でもアイツ全然怪しくなかったですよ。有翔とも面識無いっぽいですし」
「あ、ううん。山田くんは最初から疑ってないよ。彼にはちょっと個人的に気になることがあっただけだから……」
……何だ。疑ってなかったのか。
でも個人的に気になることとは何だろうか。いつ頃あんな喋り方になったのか、とかか?
「……とにかく。今回は私の私情に君を使ってしまってすまないね」
ああ。その個人的なことについては俺に話すつもりは無いと。……まあ、良いんだけどさ。
「家まで送ろうか?と言っても、学生寮だけどね」
「いや、別に一人で帰れるんで……」
会長の誘いを断り、一人になった。
「……あ、」
その時、山田の写真の女性も会長も紫色の瞳をしていたな……ということに何故か今更気づく。
「まあ、たまたまだろうけど」
俺だって藍色の瞳だし、紫なんてそこまで珍しいものでもないだろう。
「そんなことより明日から学校……ってことは部活か……」
俺は大きくため息をつき、明日に備えて今日はゆっくりしようと帰宅するのであった……。
第十話に続く……




