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とりあえずもう一度写真をよく見てみる。
髪の色や雰囲気は何となく似ているように思えたが、写真に写っている女性は母親にしては若過ぎる年齢のように思えた。
というか、どう見ても高校生くらいにしか見えない。セーラー服着てるし。
「……やっぱり、母親にしては若過ぎないか?」
「ふむ、そうか……」
余計なことは言わない方が良かっただろうか。山田は少し気を落としたようにも見えたが、次の瞬間すぐに写真を持って俺に詰め寄る。
「……なら!この女性は我の何であろうか!?」
「いやまあ……知らんけど。そもそもお前は誰か覚えてないのかよ」
「知らぬ存ぜぬ。我はどうやら過去の記憶が一部、抜け落ちているらしいのだよ」
「一部?」
「ああ。別に生活する上で困ったことは無かったので気にしてはいなかったが……そういえば母親の記憶だけではなく、この女性の記憶も無い。なのでてっきりこの女性が母親だと思い込んでいたのだが……」
何か変な記憶喪失だな。
まあ、ショックなことがあって、記憶の一部だけが抜けてしまうことは無いことでは無いだろうが。
「……ふむ」
山田は再度、その写真をじっくりと眺める。
「何か、思い出せそうか?」
「うむ。強いて言うならば……」
「……言うならば?」
「……美しい女性だな、と」
「はあ!?」
何か重大な事実が発覚すると思っていたので、山田のあまりにも気の抜けた答えに思わず大声を上げてしまった。
「ど、どうした!?驚いたぞ!?」
「驚いたのはこっちだ!確かに綺麗な人だが、今欲しい情報はそれじゃないだろ!」
「う……!しかし本当に何も覚えておらぬのだ!仕方なかろう!」
まあ、もうコイツは俺の中で容疑者から外れているし、無理にプライバシーを暴く必要は無いのだが。
でもちょっと記憶喪失とか、好奇心湧くだろ。
「この女性、我の運命の相手では無いだろうか!?もしや女神……!?」
ミューズって何だ。薬用石鹸かよ。
とりあえず真面目に話を聞くのも馬鹿馬鹿しくなったな……。俺は大きくため息をついた。




