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「ほら、客人用の茶なのだよ。滅多にお目にかかれぬが、良い品ぞ」
「……別に気遣わなくてもいいのに」
目の前に出された茶を一口飲む。うむ、これはなかなか……っておい。山田語が移ってやがる。
「美味いな」
「……!そ、そうか……!」
素直に褒めると山田は本当に嬉しそうな反応を見せた。
……さて、本題はどうやって山田の情報を引き出すか……だが。正直俺はコイツは有翔殺しの犯人ではないとは思っている。
何か、コイツそういうの出来なさそうだし。
そもそもあまり人に見せたくないであろう家に連れて来て貰っておいて、これ以上プライベートなことに触れる訳にもいかないだろう。
まあすぐに帰るのはアレだし、もう少しゆっくりしていくとするか……。
「……何も無い家であろう?」
「え、あー……今流行りのミニマリスト?みたいだな?」
「無理をせずとも良い。物が無さすぎるのは我も不満に思っておるのだよ」
黙って茶を啜る。何か、何か話題。話題は無いか。気まず過ぎるぞ。
「あ、アルバム!アルバムとか無いか?お前、いつからそんな性格になったんだよ」
今日は余計なことは聞かない……つもりだったが、意図せずしてめちゃくちゃプライバシーに踏み込んでしまったような気がする。
でも、話題が無かったんだ。それにいつ厨二を開花させたのか気になるところではある。
しかし、山田から返ってきたのは、思いもよらない返事だった。
「……ふむ。そういえば我の家にはアルバムは無いな」
「えっ?」
アルバムが無い?
それってその、めちゃくちゃ触れてはいけないことだったのでは……。
先程から相手の地雷原でタップダンスをしている気がして、思わず冷や汗が流れる。
「わ、悪い……俺、」
「ああ。でも1枚だけ写真があるのだよ。ほら」
山田は特に気にした様子も無く、ロケットペンダントに入った1枚の写真を見せてくれた。
そこには小さい山田少年と、セーラー服を着た三つ編みの女性が写っている。2人とも、髪は似たような銀髪だった。
「……お前のその髪、地毛だったのかよ」
「うむ。……写真はこれ1枚しか無くてな」
「そうか……この女性は?」
「……分からぬ。しかし、我には父親しかいなくてな。母親の記憶が皆無なのだ。恐らく、この女性が我の母親だと思っているのだが……」
……母親が、いない……だと。
今日だけでどれだけ山田のプライバシーに踏み込んだのか。俺は思わず頭を抱えてしまった。




