9-2
「……もしもし?山田?」
『山田ではなァい!!』
……ああ。今のやり取りで完璧に思い出した。
コイツ、ゴールデンウィーク前に入部した山田だ。下の名前は忘れたが。
「で、何ださっきのは」
『おお!コサキよ、我に時間を捧げてくれるのだな!』
「いや、時間を捧げよの意味が分からん。説明しろ」
『うむ。明日戦争がだな……』
「あー、後な。そのややこしい変換止めろ。普通に喋れ。伝わんねえから」
『あ、はい』
……何だ、普通に喋れるのか。
てっきり全ての言葉が勝手に厨二病変換されると思っていたのだが、普通に喋れるのなら普通に喋って貰おう。
『明日、朝9時からスーパーヨロズで卵のセールが行われるのだ』
「朝9時……開店と同時じゃないか」
『うむ。近頃卵の値段が高騰しているのでな。我は毎日もやし生活ぞ』
「お、おう……そりゃ大変だな……」
『卵など普段の我には贅沢品。滅多に手など出せぬ』
卵が贅沢品……コイツ、どんな生活送って来てたんだ?
まあ、興味は無いが……。
『しかァし!!!!』
うるせえ。電話越しに怒鳴るな。耳にダイレクトでダメージ受けるんだよ。
『明日は違う!セールで卵を買うことが出来れば、我……我は!半年ぶりに卵を食すことが出来るのだよ!』
「……いや、半年ぶりって。そんな卵食いたいなら分けてやるっての」
まあ、俺も会長に養って貰っている身でこのようなことを言うのは烏滸がましいかもしれないが。その分、きちんと働いてやっているつもりだ。
『……否!』
いや、断るのかよそこ。何でセールに拘るんだ。
『我は契りを交わした者に施しは受けたくないのだよ!』
「契りって何だよ。別にお前とは何も契約してないだろ」
『金の貸し借りをしてしまったらそれはもう、友では無くなってしまうでは無いか……!!』
契り=友達ってことか?その厨二変換止めろ。とりあえずこれからは山田特有の厨二変換を《山田語》と呼ぶことにする。
「つーか、金銭についてはしっかりしてるんだな」
『うむ!我にとって友情の契りとはそういうことなのだよ!』
「まあ、俺はお前と友達になった覚えは無いんだが」
『な、何だと!?』
受話器越しの声が本気で泣きそうだったのが面白かったが、そういう経緯なら付き合ってやっても構わないか。……どうせ会長から山田のことも調査しろって連絡来そうだし。
「……良いよ。付き合ってやる」
『そ、それは真か!?助かる!』
「ああ。じゃあ一時間前くらいに集合で大丈夫か?」
『うむ!頼むのだよ!』
……まあ、こういう経緯があった訳だ。
ちなみにその後、会長からMINEで「山田くんのこと、しっかり調べてきてね!」と連絡が来た。……絶対このスマホ、ハッキングされてるよな。




