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「おー!遅れちまってめんごめんご!」
そこに立っていたのはいつも通りウザさMAXの犬飼だった。
「お、お前!大丈夫か!何ともねえのかよ!?」
「え?え?何が?」
「だって古が何度電話しても出ねえしよ!遅れるとかいう連絡もねえならおかしいって思うだろ!」
「うお、マジだ。こさきっちからすっげー着信入ってんじゃん!」
……どうやら、俺と鮫島の心配は杞憂に終わったようだ。いや、何も無いに越したことは無いんだが。
「つーか大河、もしかして俺の心配してくれちゃった感じ?」
犬飼が嬉しそうに笑みを見せると、みるみる鮫島の顔が赤くなっていく。
「ハァァ!?ただ部活仲間のことを心配しただけだ文句あっかコラァ!!ただそれだけで別に特別な感情とかねえよ!」
いやほんとコイツ分かりやすいな。それだと『私は貴方に特別な感情を抱いています』って自ら暴露してるようなものじゃないか。
まあ……鮫島が犬飼に対して何かあるんだろうなってことは、こっちはとっくに気づいていたんだが。
「……で、犬飼。どうして連絡も無しに遅刻してきた?」
このまま鮫島の反応を眺めているのも面白いだろうとは思ったが、話が進まないと困るので助け舟を出してやることにする。
「え?女の子とデートしてた!」
「へえ……女とデート」
ん……?女とデート?
まさかコイツは部活をすっぽかして女とデートをしていたと。そう言っているのか?
しかもそんな犬飼のことを俺と鮫島は心配していた訳で……。
「ふざけんじゃねえぞゴルァァァ!!!!」
一瞬の沈黙の後、俺が指摘する前に鮫島がキレた。
物凄い舌巻いてやがる。これはめちゃくちゃ怒ってるな。いや、誰だって怒るか。
俺だって本当は怒鳴ってやりたいくらいだったが、鮫島が爆発していたので逆に冷静でいられた。
「あー……そうか。デートは楽しかったか?」
あまりにも冷静になり過ぎて、意味不明なことを聞いてしまった。
「うん!」
「あ!?何言ってやがるこのクソ犬!!」
それに対して笑顔で返事するものだから、更に鮫島の火に油を注いでしまったらしい。
「何だよ〜。大河、嫉妬してんのか?悪かったって!お前にもいい女の子紹介してやるからさ!」
頼む、犬飼。もう喋らないでくれ。
「……!!テメェ!!」
流石の鮫島も耐えきれなくなったのか拳を振り上げる。……いや、これはもう殴られてもしょうがないだろ。
だから俺は敢えて見守ることにした。
というか腹が立つので一発くらい殴られてくれと思ったのが本音だが。




