8-2
犬飼に指定された場所は学校、時間は朝の10時。
時間ぴったりに来たつもりだったが、犬飼はそこには居なかった。犬飼は。
「……おい。犬飼も来る筈なんだよな?」
待ち合わせ場所には犬飼の代わりに何故か鮫島が居た。今日は犬飼と2人では無かったのか?
「会長からグループMINEに暇そうな奴は手伝ってくれって連絡が入ってよ。暇だから来た」
俺の顔を見て俺が何を言いたいのか察した鮫島は、丁寧に経緯を説明してくれた。
というか、やっぱり鮫島ってめちゃくちゃ良い奴だよな。
「遅せぇ!!」
しかし待てど暮らせど犬飼はやって来ない。もう30分は待ったのだが。
鮫島なんて明らかにイライラしている。
「とりあえず中に入らないか?どうせ今日の依頼も教師からの雑用だろうし……」
「……おう」
俺は一応犬飼にもう一度電話をしてみたが、その電話が取られることは無かった。
「やっぱり雑用だったな……」
俺と鮫島の前には大量の書類が積み上げられている。どうやら修学旅行のしおりらしい。
これをホチキスで止めるのが今回の俺達の仕事……いや、部活だ。
「古、さっさと済ませちまおうぜ」
「ああ……」
結局あの後も犬飼からの連絡が無かったので、少し心配だった。
用事が入ったのなら誰かしらに連絡をするだろうし、まさか連絡すら出来ない状況になっているのではないかと思ってしまう。
「……古?どうした?」
「いや……最近身の回りで悪いことばかり起こるから……ちょっと犬飼が心配で」
一昨日、源氏が死んだことを思い出す。
犬飼だって有翔の友人だ。ひょっとしたら、巻き込まれることだって……。
「悪いことって、何だ」
「ああ……その……」
流されるかと思ったが、何故か鮫島は食いついてきた。
そうだな。ループのことは除いて説明することにしようか。
……待て。鮫島に話してもいいのか?
鮫島が有翔を狙っている犯人だとしたら、こちらの手の内を敵に明かすようなものではないか?
鮫島の身体の傷のことだって疑問だったし、鮫島がシロだと確定している訳じゃない。むしろ俺はコイツのことを疑っていたじゃないか。
「……古?」
……果たして俺はコイツを、信じていいのか?




