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「……最初に、ループに気づいたのは今年の春……4月くらいのことだった。まだサキが転校して来る前。でもその時は、ループしてるだなんて思いもしなかった。あれ?さっきも同じことが起こったような……ってその程度」
成程。最初はデジャブか何かだと思ってたのか。
まあ普通は「あれ?今時が戻った?」となんて思わないよな。
「それが確信になったのは……この前、ぼくの目の前で男の人がトラックに跳ねられた……その時だった」
「ああ……あのホームレスの」
「うん。あの人、居なくなっちゃったけど大丈夫かな……」
「この前会ったけど、すげー元気そうだったから大丈夫だろ」
話がそちらに逸れそうだったので強引に打ち切る。
それに、元気そうだったのは嘘ではない。
「それで、どうしてループに気づいた?」
「だって何度も何度も横断歩道を渡ることを繰り返してるんだもん。絶対におかしいって思う」
そうか。あの日、有翔は何度も死んで、何度もループしたんだ。流石にデジャブでは済まされないか。
「その後、ドブ掃除した時も戻ったよね。何でこんな風に何にもない瞬間に急にループしたりするのか、分からないけど……」
「……は?」
俺は思わず情けない声を出してしまった。
普通に考えて有翔の死がトリガーじゃないのか……?
でも今日は源氏の死がトリガーだった。ひょっとして、誰か死ぬ度戻るのか?そんな馬鹿な。
いやそんなことは今は良い。それよりも、もっと注目すべきことがあるのだから。
「お前……死んだ記憶は、無いのか?」
「……え?」
暫く沈黙が続いた後、有翔は目を丸くした。
「し、死んだ……って、どういうこと?」
やっぱり……有翔の言葉に違和感があると思ったのだ。
彼女はループには気づいている。しかし、自分が殺されていることに気づいていたら、真っ先にそのことについて触れる筈だろう。
「ぼ、ぼく……死んでるの?」
「いや今ここにいるお前は生きてるよ。だけどさ、お前が死んだ瞬間に時が戻ってるんだ」
「え?え……?」
「今まで、ずっとそうだった。トラックの時だって……本当は跳ねられていたのはお前だったんだ」
トラックに関してはその場を目撃した訳ではないけれど。
でも恐らく有翔はトラックに何度も跳ねられ、その度に何度もループを繰り返していたに違いない。
それにあの日、何度もループしているのは俺とあのホームレスが気づいている。
「……そっか。だから硝子の時……サキはぼくを突き飛ばして助けてくれたんだ。サキはループして、この後ぼくがどうなるか、気づいてたんだね」
「ああ……。とにかく、お前はループには気づいていたが、自分の死の瞬間の記憶は引き継いでいない……そういうことか?」
「そうみたい。死んでたなんて、思いもしなかった……」
まあ、有翔本人に自分の死ぬ記憶が無くて逆に良かったと思う。
あんなの覚えてたら、とてもじゃないけど正気ではいられない気がする。




