7-3
あれから俺は自分の部屋に戻り、適当に食事を済ませ、有翔を待機していた。
一応女子(ではないが、女子のようなやつ)を部屋に招くのだからそれなりに綺麗にはしておいた方が良いのではと思ったが、そもそも俺の部屋には物は殆ど無い。
記憶が無いので好きだった物すらも思い出せず、何を置いていいか分からなかったので、とりあえず必要最低限の物しか置かなかったのだ。
しかし、テレビやゲームすらない何の娯楽もない部屋で、有翔は満足してくれるだろうか……。
「……いや、違うだろ」
思わず声に出てしまったが、別に有翔とそういう目的で会う訳ではない。
こんなことを考えてしまう時点に俺に下心があるのだと疑われてしまうのではないだろうか。……無いぞ、断じて。
ただ、話をするだけだ。
でも茶菓子くらいは用意しておくべきだっただろうか。後悔してももう遅いが。
とっくに寮の鍵は閉まっており、今から外に出ることは出来ない。
今の俺には、大人しく有翔を待つことしか出来ないのだ。
……しかし、全く落ち着かない。
時間を潰そうにもテレビもゲームも、スマホすらもなかった。
「……よし。近いうちにスマホを買いに行こう」
スマホは絶対に必要だなと自覚した瞬間、ついにその時は訪れた。
コンコンッ
控えめなノック。もう日付が変わっているくらいの遅い時間だ。周りを気遣っているのだろう。
「……開いてる。入れよ」
「うん、お邪魔します」
……しまった。今のは俺から開けてやるべきだっただろうか。嗚呼、正解が分からない。
「……あ、サキ。ちゃんとした格好してる」
「まあ、一応客招くからな」
「もう。別に部屋着で良かったのに」
そういうお前は部屋着なんだな。家族が寝静まったところを抜け出してきたのだから当然だろうが。
「ぼくもちゃんとした格好してきたら良かったかな」
「別に……気にしてない」
部屋着も女らしいんだなとか、よくお前に似合ってるとか、そんなことは断じて思っていない。
「……そんなことより、話をしに来たんだろ」
「……うん」
彼女は、俺に聞きたいことがありそうだ。
俺だってお前には聞きたいことがある。
「ほら、とりあえずこれでも飲んどけ」
小型冷蔵庫に入っていたペットボトルのお茶を一本、有翔に投げて寄越す。多めに買っておいて良かった。
「あっ……ありがと」
有翔はそれを受け取って一口飲み、息を吐く。
「……サキ、ぼくの話を聞いてくれる?」
「……ああ」
俺の頷きが合図になり、それから有翔はゆっくりと話し始めた……。




