7-1
……泣くなよ、有翔。
俺のことなんて心配しなくていい。
俺なんかより、お前の方がよっぽど辛いだろう。
だから、俺なんかの為に、涙を流さないでくれ……。
「……キ、サキ!サキ!」
「……!!ここ、は……?」
……ライブハウスだ。
気絶してそれほど時間が経っていなかったのだろうか。
「全く、幾ら姉さんの演奏が神がかっていたとはいえ気絶するなんて。姉さんに心配かけないでくださいよ」
そしてこの憎たらしいクソガキは……源氏!?
「お、お前!生きてたのか!?」
「はあ?勝手に殺さないでくださいよ!」
いや、あれは確実に死んでいた。生きている訳が無い。
しかし、目の前の源氏は死んでいるどころか怪我ひとつしていない。
それに、ライトだって落ちていない。
「まさか……戻った、のか……?」
時が戻るトリガーは有翔の死じゃなかったのか?
でもこの状況は時が戻ったとしか考えられない。
「ね、ねえ!サキ!ひかちゃん!とりあえず外に出よ!ぼく、ちょっと外の空気吸いたくなっちゃった!」
「え、いや俺は構いませんが、メンバーのところに行かなくて良いのですか?」
「ちょっとだけだから!ね!ね!」
言いながらも有翔は無理矢理俺達2人の手を引く。何処か焦っているようにも見えるが……気の所為だろうか。
ガシャーン!!
……その直後、俺達の背後で何かが落下した音がした。
恐る恐る振り向くと、そこには時が戻る前にも落下したライトが……再度全く同じ場所に落下していた。
違うのは、源氏が下敷きにはならなかったということ。
「な、何ですか、これ!」
「大丈夫!?ひかちゃん!怪我してないよね!?」
「お、俺は大丈夫ですが……他の方は!?」
幸い、誰も怪我はしていないようだ。
それを確認すると、有翔はボロボロと涙を零し始めた。
「ね、姉さんっ!?」
「良かった……良かったよぉ……」
「ど、どうしたんですか!?何処か怪我をしたんですか!?」
焦る源氏の問いには答えず、有翔は源氏に抱きついて泣きじゃくるだけだった。
そしてそんな彼女の姿を見て、俺はあるひとつの仮説に辿り着いたのであった。




