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ヨロズブ  作者: 有氏ゆず
第六話 デートに弟がついてきたんだが
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6-6





「……凄かったな」

「当たり前です。姉さんですから」


演奏が終わった後も、暫く興奮が収まらなかった。

音楽に興味なんて無かった。いや、記憶を失ってから何に対しても興味を持てなかった。


楪の演奏は、そんな冷え切った俺の心を溶かしてくれたかのようだった。




「あ!サキ!ひかちゃん!」


控え室で着替え終わった楪がこちらに向かって走ってくる。

俺は俺らしくないと思いながらも、早く楪に会いたくて、俺からも彼女の元へと走った。


「凄かった、アリカの演奏。特に最後の曲。痺れるかと思った」

「ふえ!?あ、ありがと……!」

「あれ何て曲?知りたい」

「え、えっとね。あれはオリジナルなの」

「マジか。CD売ってる?」

「あっ、うん!幾つか持って来てるよ」


俺の口が、まるで俺じゃないように言葉を紡ぐ。それくらい興奮したし、感動した。

とにかくこの気持ちを、誰かに伝えたくて仕方なかったのだ。




「……だっ!?」


しかしそんな俺に水を差すかの如く、蹴りを入れてくる源氏(クソガキ)


「な、何しやがる……」

「アンタこそ何しやがってるんですか。どさくさに紛れて姉さんのことを名前呼びして」

「……!?い、いやこれは違う!その、アーティスト名で呼んだだけだ!」


自分でも気づいていなかった。興奮し過ぎだ。

今更ながら恥ずかしくなってきて、俺は何も言えなくなってしまう。






「……良いよ?」


暫く黙った後、楪が言った。


「えっ?良いって、何が」

「有翔って呼んでくれても、良いよ」

「え、ええっ!?」


まさかの本人から許可を得てしまった。源氏の視線が痛い。痛過ぎる。

しかしここで「いややっぱり苗字で呼ぶ」とか言えないだろ、普通。

























「……あ、有翔……」




長い沈黙の後、俺は絞り出したような声で楪……有翔を呼んだ。


「なあに?サキ」


彼女はそれに、笑顔で応えてくれた。




そしてその後、源氏からの本気の蹴りが入ったのは、言うまでもない。





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