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ヨロズブ  作者: 有氏ゆず
第六話 デートに弟がついてきたんだが
44/251

6-5





「……耳が痛え」


演奏だけではなく、周りの歓声も、これほどまでに大きいものだと思わなかった。

音楽に興味が無さすぎて、曲も何一つ知らないものばかりで。


……だけど、不思議と嫌な感じはしなかった。一応、楽しめているということだろうか。




「おい、疲れてないか」

「大丈夫です。もしかしてもうへばったんですか」


俺よりも体力が無さそうな源氏は何故だか平気そうだ。クソ、ムカつく。

平気どころか寧ろキラキラしているように見える、目が。


「こういうの好きなのか、お前」

「えっ……まあ、憧れはしましたけど。昔の話ですよ」

「ふーん……」


何となくコイツは音痴というか声が出ないイメージがあったが、お前に歌なんて歌えるのかよ、とはあえて言わなかった。

流石に人の夢を貶す程無粋では無い。


「歌わないのか?」

「えっ……」

「楪、ギター出来るんだろ。楪の演奏で歌ってみれば良いじゃないか」

「……歌えませんよ。姉さんの演奏は完璧で、俺なんかが隣に立てるものじゃありません。それにただ憧れているだけで、本気で目指している訳じゃ……」




一瞬、源氏の表情が曇ったのを見逃さなかった。


「お前……」

「あっ、次がラストですよ。姉さんが出ます」


しかしそれを聞く前にその話は打ち切られてしまう。

というか、楪は大トリだったのか。


「楪が歌うのか?」

「違いますよ、姉さんはギターだけです。……音痴ですから」

「……音痴なのか」


そうこう話しているうちに大トリのバンドメンバーたちが現れる。


先程まで騒がしかったライブハウスが、彼女らがステージに上がった途端、シン……と静かになった。

俺も思わず息を飲む。


そんな中、楪がマイクを手に取り息を吸い込み……

















「みんなーっ!!身体、あったまってるー!?!?」




大声で、叫んだ。


「「アリカーーーーーーーー!!!!」」


その声に応えるかのように、観客が楪の名前を叫ぶ。……あの源氏まで。


何だよお前そんな大声出せるのかよと突っ込む余裕も無かった。

そのまま演奏が始まり、俺の心はガッツリと掴まれてしまったからだ。















初めてのライブハウスで、俺は初めて『心が震える』ことを覚えた……。





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