6-3
……次の日。
俺は、緊張しているのだろうか。それとも浮かれているのだろうか。
昨夜は、あまり眠れなかった。
だけど不思議と身体は軽いように感じる。
「……初めてだからな。デート、なんて」
いや、楪は男だから正確にはデートじゃない……のか?でも、楪はデートだと言っていたし、アイツは女みたいな外見だし。
まあ俺には記憶が無くて、本当に初めてのデートかどうかは謎だ。
記憶を失う前の俺が無類の女好きで、デートどころかそれ以上にも進んでいたとしたら……それは嫌だな。
楪に指定された待ち合わせ場所に到着する。
まだ、楪は居ないようだ。
時間にはまだ少し早い。足取りが軽かったせいで、思ったよりも早くついてしまったようだ。
「……まあ、有翔を待たせるより良いか……」
──────有翔。
ふいに口から出た楪の名前。
何故呼んだ?別に俺はアイツとそれほど仲が良い訳ではないのに……。
「……っ!?」
しかし、俺の思考はそこでストップした。
いや、強制的にストップさせられたと言った方が良いだろうか。
「……来てやりましたよ、有難く思え」
「お前……」
その理由は、このシスコン野郎……源氏に思い切り背中に蹴りを入れられたからである。
「お前とは待ち合わせしたつもりはないんだが」
やられっぱなしではいられないと、言い返す。
その態度が気に食わないと言わんばかりに源氏は俺を睨みつけた。……クソガキめ。
「ひかちゃん!!」
しかし源氏の威勢も、愛する姉が登場したことにより、みるみる萎んでしまった。
「……!ね、姉さん、違います。これは……!」
「サキに酷いことしないって約束で連れて来てあげたのに!守れないなら帰ってもらうからね!」
「だ、ダメです!絶対ダメです!2人きりなんて……!」
「だったらもうサキに手は出さないこと!いい!?」
「出したのは足なのでセーフです!」
「足もダメ!分かった!?」
「はい……」
……つまり、楪とのデートに弟がついてくるということらしい。
「……何だ、2人きりじゃないのか」
俺は源氏を煽る為、わざと口に出してみせた。
案の定、あのクソガキは乗ってくる。
「やはり!破廉恥なことを考えていたんだなこのクソメガネ!姉さんは俺が守ります!」
「は、はわわ……サキはぼくとふたりっきりが良かったんだぁ……」
源氏だけを煽るつもりが、何故か楪にもクリーンヒットしてしまったらしい。
何だよその反応。……少し、可愛い。
「……!今、今!姉さんを見てにやけましたね!?ダメです!やっぱりこの男はいけません!」
「ねえひかちゃん。やっぱりサキと2人がいいなあ」
「!?!?!?ね、姉さん!?!?」




