5-7
「……お帰り、神凪くん」
寮に戻ると、会長が俺の部屋の前で待ち構えていた。
「会長……」
「どうだい?彼と話は出来たかな」
「彼って……鮫島ですか」
「うん。で、話はできた?」
……何だよ、それ。
まるで、こうなるのが分かっていたような言い方じゃないか。
「とりあえずさ。立ち話もなんだし部屋でゆっくり聞かせてくれないかな」
「…………」
正直物凄く招きたくなかったが、部外者に聞かれたくない話であることは確かだ。
俺は溜息をつき、会長を部屋に招き入れる。
「……まさか、仕込んでたんですか」
「うん、そうだよ」
会長は特に隠すことも無く、笑顔で答えた。
マジかよ。この人、俺を鮫島と話させる為に風呂まで壊すのか。
「あ、お風呂は壊れてないよ。ただ貼り紙を貼っただけ」
「えっ……普通に使えるんですか」
「あれ?確かめなかった?」
扉に故障中の貼り紙があるのに、わざわざ中に入って確かめる奴なんて居ないだろ。
というか、絶対確かめない前提で貼り紙してるよな。完全に掌で転がされたってことか……。
「……もう。分かりやすく不機嫌な顔するなあ。それで、鮫島くんと接して何か分かったかな」
「まあ……ちょろい奴ってことは分かりましたけど。後はまだ、怪しいところが少しあるけれど、決め手には欠けます」
「ふむ、成程」
やっぱりこの人は俺に鮫島のことを調べさせるつもりだったのか。
正直、気味が悪い。全部、アンタの思い通りに事が進んでるってことかよ。悔しい。
……口には出さないけど。
「ふふ。本当に人間って面白いね」
「……何ですか。まるでアンタが人間じゃないような……」
「さて、神凪古くん。部長として、君にはもう少し働いて貰いたいんだ」
どうやら、自分に都合の悪いことは答えない主義らしい。
……まあ、俺もこの人のおかげで生活が保証されているようなものだから、逆らうつもりは無いのだが。
「……それで、俺は部長として何をすればいいんですか」
「おや、案外素直だね」
仕方ない。実際俺はこの人に世話になってるんだ。
不本意だが、飼われてやることにする。
「飼うだなんて、私は人をペットだなんて思ったことは無いよ?」
「じゃあ消耗品か何かですかね」
「もう!酷いなあ」
本当に酷いと思ってるならヘラヘラ笑いながら言わないでくれ。
というか、そもそも人の心を勝手に読まないで欲しい。
「簡単なことさ。新しい部員が入るから、よろしくねってだけの話」
「また部員……ですか」
どうやら部員は募集というよりは会長が意図的に選んでいるように思える。
特に俺や鮫島なんて無理矢理入部させられたようなものだし。
「それと、引き続き鮫島くんの調査。ついでに他の部員のことも気を付けて見てくれたら嬉しいな」
ちょっと俺への負担が大き過ぎないか。
やっぱりこの人、俺のこと使い捨ての道具か何かだと思ってるだろ……。
「後、神凪くんが最近お熱なホームレスくんのことも……ね」
「……!!アンタ、何処まで……!」
「じゃあよろしく頼むよ。私は別件で動けないから」
反論は一切許さず、言いたいことだけ言って会長は去る。
……なあ、会長。
アンタは何者なんだ。
何が目的なんだよ。
俺の問いに答える声は、無かった。
第六話に続く……




