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「……さて、そろそろ上がるか」
「……おう」
何となく鮫島と打ち解けた気がする。
「あ?何だよジロジロ見て」
「いや別に。人を見た目で判断するのは良くないって思っ……!?」
……いや、前言撤回だ。やはり、コイツはヤバい奴かもしれない。
だって、普通の人間は身体中に煙草の火傷の痕とか、背中にナイフで切りつけられたような大きな傷跡とか、無いだろ。
先程までは風呂に浸かっていて気づかなかったが……。
「どうした、古」
「……いや、何でもない。さっさと着替えよう。寒い」
「……?おう」
なるべく傷から目を逸らすようにして、着替えを済ませる。
あれは、絶対に触れちゃいけないやつだ。
「おい、古。大丈夫かよ」
「……!」
俺はいつの間にか着替え終わっていて、いつの間にか外に出ていたらしい。
「さっきからぼーっとしてたみたいだけどよ。マジで大丈夫なのか?」
「あ、ああ……のぼせたのかもな」
「おいおい……送ってやりてーとこだが、そろそろ帰ってガキ共の食事の準備しねえと。一人で帰れそうか?」
「……大丈夫だ。一人で、帰れる」
「悪ィな、先帰るぜ。ちゃんと家で休めよな」
そう言って立ち去っていく鮫島の背中を、俺はぼーっと見つめていた。
……本当に、コイツは悪い奴なのか?
傷だって何か理由があってこうなったんじゃないのか?
いや、何か理由があったからって、あんな痛々しい傷がつくかよ。しかもあんな大量に。
理由があったとしたら、きっとろくでもない理由に決まってる。
だけどそれにしてはアイツは優し過ぎる……。
「……なァに辛気臭い顔してンだ、お前さん」
突然、空から声が降って来た。
顔を上げるとそこには……
「お前……何て所に座ってるんだ……」
「よォ、久しぶりだなァ」
銭湯の突き出し看板の上に座ってニヤニヤと笑う、あのホームレスの男がいた。
……というか、会ったのは昨日ぶりだろ……というツッコミは、敢えてしないでおく。




