5-1
「人殺し!!」
源氏の叫び声に、ギャラリーが校舎裏へと集まる。
「おい、人殺しって……まだやってないだろ」
「今まさにやろうとしてたじゃないですか!アンタだって見てましたよね!?」
「まあ……見てたけども」
正直、やったかやってないかで言うと、やってそうな見た目ではある。この男は。
楪だけではなく、それ以外に何人かやってそうでもある。外見がその筋の人にしか見えないくらいだ。……どの筋の人かは、敢えて詳しくは言わないが。
「あ?殺してねえよ。いきなり何だテメェ」
ドスの効いた声で返事をされ、流石の生意気な源氏もたじろいだ。
「だ、だって……さっき姉さんを……」
おお、まだ行くのか。
だが男の鋭い眼光で睨みつけられ、源氏はそれ以上言葉を発することは出来なかった。
「やっ……と見つけた!」
沈黙を破ったのは俺を探しに来たのであろう、直樹の怒りの込められた声だった。
「おやおや、こんなところで皆どうしたんだい?勢揃いじゃないか!」
続いて会長も現れる。
「おいコラ会長!!テメェのせいで人殺し扱いされてんだコラ!!」
会長の姿を見つけた途端、男が会長へと掴みかかった。
しかし、かなりの体格差がある男を目の前にしても、会長はいつもの余裕のある笑みを崩さない。
「うーん。私は有翔の手伝いをするように頼んだだけなんだけどねえ」
「そもそもどいつが《アリカ》って奴か俺が知る訳ねえだろうが!だからドブ掃除してる奴片っ端から話しかけてやろうかと思ってたら人殺し呼ばわりだ!!何なんだよこの部活は!!」
……つまり、この男は会長に言われて楪を探していただけで、楪に殺意は全く無かったと。
そもそも男は楪が誰かということ自体知らなかったらしい。知らない相手に流石に殺意は沸かないだろう。
「成程ね。神凪くんと源氏くんは彼の見た目で彼が殺人でもしそうだと判断したと」
「う……」
まあ、否定は出来ない。
「でもまあ仕方ないよね。彼、この学校ではかなり有名な人だから。そんなこともやりかねないって思われちゃうよね。……ね、鮫島大河くん」
会長が男の名を呼んだ瞬間、集まっていたギャラリーがざわついた。
「嘘だろ、あの鮫島大河……!?」
「やばいやつじゃん、あいつ……!」
「あいつだったらマジで殺しかねないだろ……」
「……あ゛ぁ!!?」
ギャラリーの声はしっかりと鮫島の耳に届いていたらしく、鮫島は不機嫌そうに怒鳴りつける。
「やばい、殺される……!」
鮫島にビビったギャラリーは、全員逃げるようにその場から去って行った。
「……会長。酷いっすよ、その言い方」
「おや、君までやって来たのかい」
ギャラリーが去ったのと入れ替わりで、犬飼がやって来る。
結局、校舎裏に部員が全員集合してしまった訳だ。
「大……いや、鮫島は……ンなことしない……」
「余計なお世話だ、犬飼」
「……そうかよ」
どうやら犬飼と鮫島には何か因縁がありそうだ。
……まあ、俺は全く興味が無いんだが。




