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「……その、大丈夫なの。それ」
……時が戻る。
「は?大丈夫って……何が?」
「いや、だから……記憶喪失とか、家族が居ないとか、大変でしょ……」
直樹の言葉で確信する。
ループ地点は……既に直樹とドブ掃除をしている瞬間だった。
「嘘だろ……!直近かよ……!」
「は?何?どうしたの?」
直樹からすれば突然俺が変なことを言い出したようにしか見えない。先程まで家の事情の話をしていたというのに。
しかし、説明している暇は無い。
この後すぐに楪は死んでしまうのだから。
「悪い!急用が出来た!」
「は!?ちょっと、掃除は!?」
「待ってろ!すぐに戻るから!」
「はあ!?ふざけないで!サボる気でしょ!?」
直樹にろくに説明出来ないまま、俺は楪の元へと向かう。
仕方が無い。本当に時間が無いんだ……!
楪の担当は……確か校舎裏辺りだった。
急いで校舎裏まで走ると、鼻歌を歌いながらドブ掃除をする楪が居た。良かった。まだ生きている。
しかし、そんな楪の背後から一人の男が近づき、楪に手を伸ばそうとしている。
ま、まさか……突き落として殺す気か……!?
「ゆず……っ」
「姉さあああああん!!!!」
俺が声を出す前に、ある男が大声を出した。
「えっ、ひかちゃん!?どうしてここに……うわっ!」
「姉さん!姉さん!無事ですか!?」
声の主は楪の弟の源氏だった。
源氏は困惑する楪に抱き着き、怪我はないかと聞いている。
「……おい。お前の担当はここじゃないだろ」
とりあえず楪を助けようと、俺は楪姉弟に近づいて声をかける。
「クソメガネ。その言葉、そっくりそのままアンタに返してやりますよ。アンタの担当だって、ここじゃない筈ですけど」
「俺は……まあ色々理由があって」
まあ、ひとまず楪は守れたということだろうか。
「でもでも!何で2人ともここに来たの?サボりはダメだよ?」
楪の言葉に俺ははっとする。同じタイミングで源氏も何かを思い出したようだ。
「違う、サボりじゃない。お前の後ろから……!」
「違いますよ!姉さんを狙っている男が……!」
「わー!2人とも!一気に喋っちゃ聞こえないよ!」
楪の言葉に俺達はお互い一度黙る。
まあ、恐らくお互い伝えたいことは同じことなのだろうが。
俺はふう、と息を吸い込んで、言った。
「楪の背後から!」
「あの男が!」
「「突き飛ばそうとしていた!!」」
……源氏と上手くハモってしまった。別に狙った訳では無いのだが。
しかも楪を突き飛ばそうとしていた男を指差すタイミングもバッチリ揃ってしまった。
おい、不機嫌そうな表情を見せるなクソガキ。
「……あ?」
俺達に指をさされた男は、不機嫌そうに俺達を睨みつけるのであった……。
第五話に続く……




