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ドブ掃除をしている彼女の後ろ姿に、私はゆっくりと歩み寄る。
「あ!どうしたの?自分のとこ、終わった?」
気づかれないように気配を消して、足音も立てなかったつもりだった。
だが彼女は……有翔は私の存在に気づいたらしく、笑顔で振り返った。
その笑顔が、とても愛しかった。
「手伝いに来てくれたの?優しいね」
私の本当の気持ちになど気づきもせず、有翔は私に話しかける。
「どーしたの、黙っちゃって。あ、分かった!疲れちゃったんでしょぉ」
揶揄うように悪戯っぽく笑いかける有翔。
……ああ、愛しいなあ。
───────憎タラシイナア。
「……きゃっ!」
悪意を込めて、私は有翔をドブへと突き飛ばす。
不意をつかれた有翔は、そのままドブへと落下してしまった。
「ち、ちょっとー!何するのー!?」
有翔は少し怒ったような反応を見せるが、彼女はまだ、私が悪戯で突き落としたのだと思っているのだろう。
「もうっ、悪戯にしてはちょっと酷いよ。お風呂入らなきゃ臭いついちゃう……」
私はドブから上がろうとした有翔の頭を、思い切り踏みつけた。
「!?〜っ!!ーーーーーっ!!!」
有翔が上がって来られないよう、何度も何度も踏みつけた。
「お前なんか、有翔じゃない」
死ね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!
私が欲しいのは、お前じゃない……!!
有翔が抵抗する度、踏みつけた。何度も何度も。
踏みつけられた彼女は最初は力強く抵抗していたものの、そのうちその力は弱まっていき……完全に動かなくなった。
このドブの中で死んだふりをするなんて不可能だろう。
だけど念には念を入れ、更に踏みつける。確実に殺す為に。何度も何度も何度も何度も何度もなんどもなんどもナンドモ。
何分くらいそうしていただろうか。
私はようやく彼女の頭であろう部分から足を退け、ドブから上がって座り込んだ。
これまで、何度彼女を殺そうとして、何度失敗したことか。
何者かに邪魔されているのかと思ってしまう程、何度も失敗した。
だけど、ようやく。
「やった……。これでやっと、本物に……」
達成感からだろうか。人を殺した恐怖からだろうか。身体が重い。
頭も痛い。目の前が、チカチカして、回るような感覚がする。
ああ。気持ち悪い──────……




