1-3
「こさきっち!飯いこーぜ!」
何やかんやで昼の時間になり、俺は再度このチャラ男に絡まれている。
というか、授業中ひたすら話しかけてくるので無視をするのが大変だった。
「断る」
「えー!マジかよ!でもこさきっち、食堂の場所とか知らねーだろ?」
……う。それは確かに、知らない。
「な!な!教えてやるから一緒に行こうぜ!?」
「……仕方ないな」
転校生である以上、ある程度はクラスメイトに頼らないと生活していけないものである。……不便だ。
「いただきまーす!」
「……頂きます」
春先とはいえまだまだ冷えるので、うどんを注文する。
チャラ男は定食に単品のカレーをつけていた。いや、よくそんなに食えるな……。
「やっぱ食堂の飯は美味いぜ!」
「……普通だな」
「ちょ、そんな冷たいこと言うなよ!」
不味くは無い。だが特別美味いという訳でも無い。普通なのである。
「とりあえず、改めて自己紹介するぜ!」
飯を食いながらチャラ男は喋り出す。
食事中くらい黙ってられないのか、こいつは。
「ああ、チャラ男だっけ」
「ひっでえ!全然覚えてねーじゃん!」
「覚える必要性を感じない」
覚える気のない相手の自己紹介を二度も聞くのは苦痛でしかない。それとなく断ったが、チャラ男は無視して続ける。こいつのメンタルはどうなっているのだろうか。
「俺は犬飼零士!」
「成程。お前のことがよく分かった」
「はっや!まだ名前しか名乗ってねーだろ!?」
「お前が犬みたいにキャンキャン騒ぐ空気の読めないやつだってことは、よーく分かった」
……暫しの沈黙が流れる。流石に言い過ぎただろうか。
いやでもこれからこいつに構われるのは面倒で仕方ない。だから最初から拒否反応を示しておかないと……。
「かっけー!これがクールってやつなんだな!」
前言撤回。全然効いてないぞ、こいつ。
何度も言うが、どういうメンタルをしているんだ。
「決めた!俺こさきっちと親友になる!」
「いや、俺はお断りなんだが」
「はい!これ俺の連絡先!」
「聞けよ」
紙に書かれた連絡先を無理矢理押し付けられる。
「いや、そもそも俺携帯電話持ってない───」
「あ!そろそろ昼休み終わりだぜ!教室戻らねえと!」
……いや、聞けよ。
その言葉を発する前に無理矢理手を引かれ、俺は教室に連れ戻されるのであった。