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「姉さん、そろそろ……」
「あっ……もうこんな時間!ごめんねぼくんち親厳しいから、帰らなきゃ……!」
「……待って」
今にも帰ろうとしている楪姉弟を会長が呼び止める。笑顔で振り返る楪と、迷惑そうに振り返る源氏の姿は本当に姉弟なのか疑ってしまう。
「ん?どしたの、ハルくん?」
「あの。うち本当に厳しいんで、あんまり残れないんですけど」
「帰り道で何かあってはいけないからね、車で送らせるよ」
「え、ほんと!?わーい、ハルくんの車だあ!」
「アンタ、車なんか持ってるんですか。本当に高校生なんですか」
弟よ、それに関しては俺も同意だ。
この人絶対普通の高校生じゃないだろ。
「じゃあちょっと部下に頼んでくるから神凪くんはそこで待っていて欲しいな。有翔と源氏くんは外で待ってて。すぐに送らせるから」
……部下。部下って言ったかこの人。高校生で既に部下持ち。やっぱりこの人絶対変だろ……。
「……ン、」
3人が部屋から出て行くのとほぼ同時に狙っていたかのようにホームレスの男が目を覚ました。
「おい、大丈夫か?」
「あァ、平気だ。ここは……何処だ?」
「俺もよく分からないけど、同じ学校の生徒会長の家だな」
「ふん、そうかァ……」
言いながら何事も無かったかのように男は起き上がる。
「いやいや待て待て!?安静にしてろって言われたんだぞ!?」
「もう平気だ。俺ァ普通の人間とは違う」
「それはその通りかもしれないが!お前、トラックに跳ねられて……!」
……俺が次の言葉を発する前に、男の手が俺の口を塞ぐ。
「……静かにしろ。……ここに、居たくねェんだ」
「は……?」
「嫌な空気だ。ここに居たらおかしくなっちまう」
……変な匂いでもするだろうか?
俺には何も感じない。少し(いやかなり)豪華な部屋だとは思うが……。
「とにかく俺は帰るぜ。適当に誤魔化しておけェ」
「あっ、ちょっ……!!」
俺が引き止めるよりも先に男はするりとベッドから抜け出し、窓から飛び降りた。
……いや、ここ何階だ!?
窓を覗き込むと、もうそこに男の姿は無かった。
「……神凪くん?」
「……!?」
と、同時に会長が戻って来る。嫌な汗が流れた。俺が悪いことをした訳でも無いのに。
「逃げちゃったのかい、あの人」
「まあ、その窓から」
嘘をつく理由も無かったので正直に答える。
「……彼には色々聞きたいことがあったんだけどね。残念だ。やっぱり窓のない部屋にしておくべきだったかな」
そう言った会長からどす黒いオーラのようなのが見えたような気がしたが、俺は気づかないふりをすることにした。
「じゃあその、俺も帰ります」
「そうかい?送るよ」
「いや、俺は楪と違って狙われてる訳でも無いんで、大丈夫です」
「……分かった。また明日ね」
会長に一礼し、俺は会長の家を後にした。
……しかし改めて外観を見ると、凄い家だな……。
「お待たせ、お姫様」
「……晴臣。誰か、来ていたの?」
「耳がいいね。あの部屋まで聞こえたのかい?」
「………………ちょっとだけ」
「嘘は良くないね。抜け出しただろう?」
「だって……懐かしい声が……」
「ダメだよ」
「……キミは、大人しく飼われていてもらわないと、困るんだ」
「そうだった……。ごめんなさい」




