3-10
「なっ……!」
楪の弟の声が聞こえ、振り返ったと同時だった。
何も出来なかった。ただ、何が起きているかを頭の中で整理することで精一杯だった。
俺がぼんやりと眺めている中、暴走するトラックが、彼女を─────……
……もう一度ループすることを覚悟し、俺は目を閉じた。
しかし、《ズレる》感覚がいつまで経ってもやって来ない。
「……?」
恐る恐る目を開けると、そこには想像もしない光景が広がっていた。
まず、結論から言うと楪は無事。弟である源氏に抱きしめられている。源氏は号泣している。……要らないか、この情報は。
そして何故か知らないが……先程から一緒にいたホームレスの男が倒れていた。……血塗れで。
「……いや、何があった!?」
俺は思わず大声を出してツッコミを入れた。
「その男が……姉さんを助けてくれたんです」
涙を拭いながら源氏が答える。
……って、コイツが?コイツは俺の隣に居たはずだし、楪との距離は結構離れていたんだが?絶対に間に合わないと判断して、俺はもう一度ループする覚悟だったんだが?……間に合った?
コイツは……超人か何かか?
「……おう、嬢ちゃんは無事かァ」
「う、うん!ぼくは大丈夫……!」
「いや、お前が無事じゃないだろ!」
楪が無事なのは良かったが、楪の心配よりまず自分の心配をしろ!お前の方が絶対大怪我だろ!
しかも男は何事も無かったかのように起き上がった。
「俺ァ問題ねェ。……慣れてる」
「交通事故に慣れてるって、お前どういう生活してたんだ……」
病院に連れていくべきだろうか。でも普通に立ち上がってるみたいだし、見た目ほど酷い怪我では無いのかもしれない。
……と思ったが、男は立ち上がったと同時に……そのままその場に倒れ込んだ。
「……いや、やっぱり無事じゃないな!?」
第四話に続く……




