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「……悪い、急用が出来た」
「おう、そうかァ。まあ、白い女……暇な時にでも探しといてくれ」
男のその言葉を最後に、俺はその場から急いで立ち去る。
確か楪はもう家に帰ると言っていた。弟も一緒の筈だ。
「……!いや、アイツの家とか……知らないだろ……」
冷静になって足を止める。俺は楪の家を知らない。
なら何処に向かって走れば良いというのか。そもそも俺はどうして楪に対してここまで必死になっているのか。
それは会長に頼まれたからだが、別に強制されている訳ではないし、聞く義理も無い。
第一、出会ったばかりの女(男?)だ。
そんなやつの為に、俺が動く必要なんて……
「……身体が勝手に動いてンだ。大事なんだろ、その嬢ちゃんのこと」
不意に右側から聞こえた声に振り向くと、そこには先程別れた筈のホームレスの男がいた。……着いてきてたのか!?
「な、何でここに……というか、何で楪のことを知って」
「あァ。お前さん、思いっきり口に出てたからなァ」
……どうやら先程の俺の思考は全て口に出ていたらしい。何か、恥ずかしい。
「何があったか詳しくは知らねェが……助けたい女が居るんだな?」
「……ああ、でも場所が分からなくて……きっともう時間も無い……」
その時、再度《時空がズレる》感覚がする。
「……!ここ、は……」
「……ズレたか」
俺は男と出会って話をした、学校前に戻されていた。
「クソ……!早く助けてやらないと、アイツは何度も殺されて……!!」
「慌てるなァ。幸い俺とお前は時空がズレても記憶を引き継いでいられる。お前、学校に戻ってさっさと嬢ちゃんの住所聞いて来なァ。そんで次のズレで……助けに行きゃァ良い」
……そうか。
たまたまループ地点が学校前だったお陰でそれが出来る。
「……分かった。行ってくる!」
「急げェ。またすぐズレが来る」
楪のことを知っていそうなのは……会長か。まだ学校に残っていれば良いのだが……。
俺はその望みにかけて、生徒会室へと急いだ。




