3-5
「……と、言ってもな」
正直、記憶も無ければ当ても無い。
内部の人間を探れと言われてもどうやって探れって言うんだ。
直接「お前が楪を殺しているのか」なんて聞く訳にもいくまい。というかそんなこと聞いたら頭のおかしい奴だと思われて終わりだ。
……よし。今日はもう帰るか。
会長から聞いた話は、明日考えることにしよう。
そうと決まれば今日はさっさと寮に帰ってゆっくり身体を休め─────
「……よォ」
─────ようと思っていたのに。
一人の男の声が、それを許してくれなかった。
「………………」
「おい、人が声掛けてンだから無視するんじゃねェ」
「生憎俺にはホームレスの知り合いはいない」
話しかけてきた男は恐らくホームレスだろうか。ボロボロの服で髪はボサボサに伸びきっており、何より体臭が酷い。
というか上は和服で下はジーンズってどんなファッションセンスなんだ。
……とにかく、絶対に関わってはいけないと、一瞬で理解出来るような外見であった。
なのでそのまま通り過ぎようとしたのだが。
「待ちやがれェ」
無理矢理腕を掴まれ、立ち去ることは出来なかった。
「……ッ」
怪し過ぎるホームレスなんかに構ってやるつもりは無いので、すぐにその手を振りほどこうとするも、その男は華奢な見た目に反して物凄い力だった。全く、振り解けない。
舌打ちする俺を見て、男はニヤリと笑って言った。
「……悪いようにはしねェさ。俺の話を聞いていきなァ」
「話って、何だ」
もう既に悪いようにされているのだが。
とにかく話を聞かないと解放してくれなさそうだ。
仕方なく、俺は男の話に付き合ってやることにした……。




