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ヨロズブ  作者: 有氏ゆず
第十四話 国民的アイドル誕生の日なんだが
110/251

14-5





……油断していた。


最近、有翔は狙われることは無く、時も戻ることは無かったから。

それに、まさかこんな大勢を巻き込んでまで有翔の命を狙って来ることはないと思っていたのだ。




「……!」


時が戻った。

今は……源氏の3曲目が終わろうとしている。


ならあまり時間は無い。この後すぐにこの会場は崩れて、全員が犠牲になってしまう。




「……有翔!」


俺はすぐに有翔の方を振り返る。彼女も記憶を引き継いでいる筈だ。

有翔はすぐに頷き、俺の言いたいことを察してくれた。


「脱出しなきゃ……!でも、こんな大勢を説得するなんて無理だよ……!」


……そうだ。この短時間で全員を避難させるように説得するなんて、絶対に無理だろう。

それこそ舞台に上がって、マイクで叫ぶくらいしないと……。






「皆さんっ!!」


そう思った矢先、源氏がマイクで大声で叫んだ。


「今すぐここから脱出してください!とにかく早く!!」


その言葉に観客がざわつき始める。当たり前だ。急にそんなことを言われたって意味が分からない筈だ。


「早く!時間が無いんです!!」


聞いたこともないような大声で叫ぶ源氏。

その声に圧倒され、客はゾロゾロと避難を始める。




「ど、どういうことなのだよ……!」

「知らないよ!とにかく出ろってことでしょ!」

「……ちょっと。何か、ガタガタって音しねえ?」

「は?零士お前何言って……」


客に続いて俺達部員も避難をし始める。

その時だった。






「……待って!源氏くんがまだ……!」


普段笑顔を崩さず、常に落ち着いた様子の会長が動揺している。


「そうだ、源氏がまだ舞台に……!」


そして会長の言葉の意味を理解した、その瞬間だった。













「いやああああああーーーーーーっ!!!!」




有翔の悲痛の叫びと同時に、無惨にもライブハウスは崩れ去ってしまう。


「……チッ、仕方ない。また《彼女》に……」


珍しく動揺した会長が何か言っているのが聞こえた。


何を言っているまでは聞こえなかったが舌打ちまでしたということは、彼も相当追い詰められているということだろうか。

彼は周りも気にせずスマホを取り出し、何処かに電話をかけ始める。


「……もしもし、私が電話したということは……分かっているね?時を──────」














「その必要は、ねェよ」


聞き覚えのある声に振り返ると、そこには……




「……よォ、コサキィ」


あのホームレス……神々廻黎一郎が源氏を腕に抱え、俺のすぐ後ろに立っていた。




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