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……いや、上手いだなんて一言で片付けられるようなレベルじゃない。
身体がぴりつくような、痺れるような、そんな歌声は生まれて初めて聴いた。
舞台から目が離せない。
コイツからこんなパワーボイスが出ているなんて信じられない。普段は何を話しているか聞き取りづらいくらいボソボソとした話し声だというのに。
「よし、源氏くん!2曲目行っちゃおうか!」
「……!はい!晴臣さん!」
会長に言われ、2曲目も歌い始める源氏。
その瞳はキラキラと輝いており、いつも何かを諦めたように目から光が失われていたアイツでは無かった。
それにあのやり取り……会長を余程信頼しているように思えたが、この数週間で彼は源氏になにをしたのだろうか。
「……3曲目!行きます!」
……いや、そんなことはどうだっていい。
今は俺もこの空気に酔いしれていたい。一瞬だって目を離したくなかった。
だって会長曰く、これは国民的アイドルになる男の、初めてのライブなのだから……!!
「……はあっ……はあっ……」
曲が終わった後、疲れたのか源氏の吐息が聞こえてくる。3曲も連続で歌ったのだから当たり前だ。
というか、それほどまでに源氏が体力をつけていたことに驚いた。会長は源氏に何をしたんだろうか。
そして、源氏の吐息がはっきり聞こえるくらい、会場は静まり返っていた。
でも決してアウェーだった訳じゃない。むしろ、凄すぎて誰も一言も発せなかったのだ。
その証拠に、ここにいる全員が舞台から目を離せていない。
「……あっ……その、楪光源氏です。えっと、ありがとうございました……!」
舞台の源氏がそう言った後、静まり返っていた会場が大歓声に包まれたのであった……。




