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「ライブ観れば良いってのは分かりましたけど、誰のライブなんですかこれ」
「ふふ。これから国民的アイドルとなる子の第一歩のライブってところかな」
……ということは、デビューしたての新人ってところか。あまり期待出来なそうだな。
「心配しなくても君達もよく知っている子だよ」
「……?俺、あんまり地下アイドルは詳しくないですよ。そもそも、売れてるアイドルですら知らないんですけど」
「本当によく知っている子だから。それに、実力もある」
「……そうですか」
「……さあ、始まるよ。国民的アイドルの、初ライブが」
会長が呟く。それ程まで今から登場するアイドルを目にかけているのか、そう思いながら舞台に目を移すと……俺は思わず自分の目を疑った。
「……源氏じゃねえか」
そう。舞台に出てきたのは、俺達もよく知るよろず部員の楪光源氏。
後から来るってこういうことかよ。だから一緒に来られなかったのか。
確かに源氏はアイドルという職業に憧れていたように思える。その時は自分には絶対に無理だと諦めていたようだったが……会長と共に過ごすうちに何か心境の変化でもあったのだろうか。会長は源氏に何をした?
しかし、よく見るとかなり緊張しているようだ。バッチリ手が震えている。
おい、大丈夫かよ。マイク落としそうだぞ。
「頑張れひかちゃーん!」
戸惑いを隠せない部員達の中、有翔が手を振って声援を送る。いや、受け入れるの滅茶苦茶早いな。
しかし、有翔の声すら聞こえていないのか源氏は一言も発さない。
「……何だ?どうした?」
「ちょっとトイレ行ってこよっかな。どうせ無名の新人でしょ」
おいおい、何か俺まで緊張して来たぞ。
それぞれが思い思いに行動する中、空気を読まないで曲が流れ始める。いや、こんな状態で歌える訳ない──────
「─────────!!!!」
歌声が響き渡った瞬間、今までザワついていた会場が一瞬で静まり返った。
トイレに行こうとしていた女性は足を止め、新人なら興味無いと言わんばかりにスマホを弄っていた男の視線も舞台の方に釘付けになっている。
「……え?え……?」
実の姉である有翔ですら困惑しているようだ。
……誰も、知らなかったのだ。
コイツが、楪光源氏が、こんなに歌が上手いなんて……。




