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「というか私、2人のお名前も知らないんです。教えて貰っても?」
……ああ。そういえば名乗っていなかったな。見た目が会長そっくりだから、こっちのことを知っている前提で話を進めてしまっていたが、良く考えれば俺達は初対面なのである。
「……神凪古、です」
「わ、我は氷室影羅……!」
「いや、お前は山田だろ」
「山田ではない!!」
「古さんと、影羅さんですね!よろしくお願いします♪」
アキさんは騙されやすい性格なのかもしれない。偽名の方の《氷室影羅》の方を信じ込んでしまったようだ。
「は、初めて我の真名を……!」
一方で山田は、初めて影羅の方で呼ばれたらしく、偉く感激していた。
……まあ、本気でアレが本名だと思っているのはどうかと思うので、訂正しておいてやるか……。
「分かってると思いますけど、氷室影羅は偽名で、本名は山田」
「コ、コサキ!余計なことは言わなくて良いのだよ!」
「いや、だってちゃんと本名を教えとかないと」
「……古さん」
俺が言い終わる前にアキさんが口を挟む。
「私、名前なんて大して意味が無いと思うんです。ただ呼び名が無いと不便だから……その程度の存在だと思うんですよ」
「…………」
「だから彼は山田さんにも影羅さんにもなれます。私だって本当は……」
……そこでアキさんは不自然に言葉を打ち切る。
しかしすぐに取り繕うように笑顔を見せ、続けた。
「……まあ、私は影羅さんと呼びたいので、そう呼ぶだけですよ」
「アキさん……!やはり貴方は我の女神……!」
「あ、薬用石鹸は嫌ですよ?」
一瞬見せた不自然な間が気になるところだが、あまり触れない方が良さそうだな。山田も呼んでもらえて嬉しそうだし。
「……そういえば、2人はどうしてここに?」
「それは……」
そうだ。俺達は部活として備品の買い出しに来ていたんだった。色々あって頭から飛んでしまっていたが。
かくかくしかじか。
俺はアキさんにここに来るまでの経緯を説明するのであった……。




