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「か、会長じゃ、ない?」
なら目の前にいるこの人は……いったい誰なんだ?
「はい。私は私立富士見学園生徒会長である高本晴臣……ではありません。ですがその話をする前に、邪魔な人達を追い払ってしまいたいです」
「いけません、我が女神。その手を穢しては……」
「穢しませんから。……邪魔なんでさっさと立ち去ってくれます?そのノビてる人も連れてってくださいね」
「「す、すみませんでしたーーーー!!すぐに去りますーーーー!!」」
……会長に似た男に言われ、《鬼頭組》と名乗った男達はすぐにこの場から去っていった。逃げるように。
「……さて!改めましてこんにちは。私は高本晴臣の双子の弟……寺本明臣と申します。どうぞよろしくお願いしますね」
会長に似た男……改め明臣さんはぺこりとお辞儀をした。
「寺本……?いや、会長の苗字は高本だったよな?」
「はい、そうですよ。まあちょーっと複雑な事情があるってことです。ハルが言わないのに私が言う訳にはいきませんので、教えてあげませんけど」
まあ、兄弟別々の苗字なんて今時珍しいことでもないだろうし、別居とか離婚とか、人には言いたくないような複雑な理由があるだろう。
わざわざ触れないでおくか。
「あ、そういや御三家って」
「あー!アレはちょっと、有名なお家の名前をお借りしただけですよ。あの人達のタトゥーはシールで貼っただけの偽物でしたし。ちょこっと脅せば去ってくれるかなあって」
……本当にそうだろうか?
ハッタリであのような脅しが出来るとは思えない。まるで、あのような状況に慣れているとでも言わんばかりの対応だったように思える。
しかし、言わないということは聞かれたくないような内容なのだろう。
気にならないと言えば嘘になるが、下手に突っついて俺自身まで怖い目に遭いたくはない。好奇心よりも身の安全優先だ。
「後、私明臣って名前、あまり好きじゃないんです。可愛くないので。可愛く《アキ》って呼んで下さればとても嬉しいです♪」
「ア、アキさん……?」
流石に呼び捨ては出来なかった。会長と双子ということは俺よりも歳上だ。
というか、先程の様子を見て、呼び捨てしようだなんて思えないだろう。
「うーん。ちょっと距離を感じますけど、まあOKです。ほら、そっちのあなたも」
「い、いや!あ、あ、、貴方は我の女神で……そ、そんな、気軽に、お、お呼びする訳には……」
突然話を振られ、吃りまくる山田。さっきから気になってたんだがミューズって何だ。惚れてるにしてもダサすぎるぞその呼び名は……。
「えー、私はもっとお近付きになりたいんですけど。それに、薬用石鹸みたいな呼び名は私好きじゃないです」
「ア……………アキ……さん…………」
「むー。2人とも距離感じますよ。寂しいじゃないですか」
……顔もそうだが、こういうおちゃらけたところも会長に似ているなと思った。本心では何を考えているか読めないところも、だ。




