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「う…」
ここは、何処だ。
目が覚めた時、最初に浮かんだ感想はそれだった。
俺が起きた時、見えた景色は明らかに外だったからである。
俺は外で寝ていた?何故?
いや、そんなことよりももっととんでもないことが起きていることに俺は気がつく。
「……俺は、誰なんだ?」
そう。何と自分の名前が思い出せないのだ。
自分が日本人であること。
そして自分が男であることは分かる。
しかしそれ以外の記憶が全く無い。
どんな名前で、何処に住んでいて、どういう人物だったのか。
何も、分からない。
……よし。
とりあえず状況を把握してみよう。
と言っても記憶が無いのだから今自分が何処にいるのかすら分からない訳だが。
情報を得る為に辺りを見渡してみることにする。
「……学校?」
最初に目に入ったのは何と学校だった。
どうやら俺は校門の目の前で倒れていたらしい。
普通は大騒ぎになりそうなものだが、時計を見るに時間的に今は授業中なのだろう。
まあとにかく中に入って──
「…………!!」
「……あ、」
校舎に入ろうとしたところ、1階の窓際にいた少女と目が合った。
少女はぽかんとした表情で俺を見た後、何と窓から飛び出してきた。
「楪さん!授業中ですよ!後、窓から出るのは止めなさい!」
「ごめん先生!一大事なのー!」
中から大人の声が響く。
恐らく教師だろうが、彼女は教師の止める声も聞かずに俺に駆け寄ってきた。
「どーしてここに来ちゃったの」
少女が俺に話しかける。
「あ、いや。ちょっと事情があって」
どんな事情だ、と我ながら思った。
「事情?」
「ああ、その……気づいたらここに倒れてて」
「ええっ!?どーゆーこと!?」
「何も覚えてないんだ。記憶喪失ってやつ」
「きおく、そうしつぅ!?」
少女は心底驚いているようだ。
俺だって同じ状況なら驚くだろう。
「んー……よし!とりあえず中入ろ!先生に相談しよ!」
「えっ、ちょ、」
少女はにっこりと笑い、俺の手を引いた。
手を繋がれている俺は為す術なく校舎に入ることに。
何かこいつ、力強いな。
……なんて呑気にそんなことを思ったりしながら。