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味なもの



そこで目が覚めた。

何とも壮大な夢を見ていた気がする。

私は素直になれない男で、美人の奥さんがいた。

私と何も関係がなさそうなのに、何故か他人事のようには思えない内容だった。

そう思うのは、結婚式が明日に迫っているからだろうか。

机の上には明日のスケジュールと披露宴の座席表と親への手紙。

覚えることと確認事項が多すぎて、15分ほどのうたた寝をしてしまった。


「お、起きたか」


お風呂上がりの旦那、ゆう君が髪をタオルで拭きながらやって来る。


「あー、濡らさないでよ」


私の言葉に彼は「ごめんごめん」と謝り、洗面台に戻る。

本当に良い旦那さんだなと思う。あの男とは大違い。

彼に夢の話をしようと思い、私も洗面台へと向かう。

髪を乾かす準備をする彼を、鏡越しから見る。


「どしたー?」

「んー、変な夢見てさ」

「どんな?」


私は覚えている限りのことを話した。夢だから支離滅裂としていそうなのに、思い出してみると意外とロマンティックな内容になる。


「ちーちゃんが男なの?」

「視線とか思ってることとかはそうだったよ」

「変な夢だね」

「うん。変な夢」


彼はそのままドライヤーで髪を乾かしている。


「夢だけど、夢じゃなかったりしてー」

「んー?なんてー?」

「なんでもなーい」


そう言って部屋に戻り、私はまた書類たちと睨めっこを始める。

好きなのに好きだと伝えられないとは、どういうことなんだろうか?

ケンカばっかりして、本当に結婚生活は楽しかったのだろうか?

私には理解ができなかった。

私も彼のゆう君もケンカが好きじゃなくて、何かあったらどちらかがすぐに直すからケンカにならない。

毎日のように好きだと言葉にして伝える。言葉にしないと伝わらないことは沢山あるのだ。


「ダメだー、集中できない」


諦めて明日に備えて寝よう。

そう決心して寝室へと向かい、寝る準備に入る。

そこにゆう君がやってきた。


「寝るの?」

「もう遅いから明日に備えないと」


布団に潜って数分してから、ゆう君は声を発した。


「ちーちゃんが言ってたあの夢さ、僕らの前世だったりして」


彼の言葉に耳を傾ける。


「いやぁ、なんかさ、結婚前夜にそんな夢見るのって、なんかそんな気がするなーってだけなんだけどね」


彼は慌てたようにそうつけ加えた。


「私もそう思う」


初めて会った時から、「この人と結婚する」私はそう決めていたし、ゆう君もそうだと言っていた。


「私たちはきっと、あの二人の理想の姿なのよ」


なりたかったけど、なれなかった二人の幻影が私たちなのだとしたら、ゆう君と一緒になることは前世から決まっていた運命なんじゃないだろうか。それって、なんだか凄くない?


「じゃあ僕たち、次も一緒になるかもね」

「性別も姿も考えも、全てが変わっても、一緒になれるね」

「明日、神様と皆の前でちゃんと宣言しようか」

「それに備えて、もう寝ましょう」


そう言って私たちは目をつむり、夢の中に入って行った。

夢の中には、あの男と美人な女と私たちがいて、目の前にはまた違う姿の私たちがいる。

あぁ不思議なほどに、私は彼と、彼は私と、離れられないのだ。






結婚前夜をテーマにした話。

ケンカップルが生まれ変わってラブラブカップルになるなんて、尊死しかない…とテンションアゲアゲで書いた。

不器用な男と酒豪の美人が好き。

好きな要素しかいれなかったけど、案外上手くまとまったと思っている。

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