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【完結済】多分、異世界転生もの。  作者: 久遠 魂録


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改札口の防衛線、あるいは愛の検札

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

「ガァァァァァァッ!!」

中央駅の地下ホームに、絶叫が轟いた。 天井をぶち破って降りてきたのは、黒い太陽から遣わされた漆黒の巨人――**「システム・ガーディアン」**だ。 その巨体はホームの幅一杯に広がり、無機質な単眼が赤く明滅している。

『対象(八千代)ノ消失ヲ確認……。追跡不能』 『ターゲット変更。……逃走ヲ幇助シタ「異物」ドモヲ、全テ排除スル』

巨人が腕を振り上げると、その腕が巨大な削岩機ドリルへと変形した。 狙いは、八千代が消えた「改札口ゲート」そのものだ。

「……させねえよ」

遼司は、改札口の前に仁王立ちになった。 その背中には、八千代を見送った余韻と、絶対にここを通さないという決意が張り付いている。

「ここは、あいつが帰ってくる玄関だ。……土足で踏み荒らすなら、通行料(命)を置いていけ!」

遼司は右腕カインを構えた。 リミッターは解除されたままだ。腕全体が赤熱し、スーツの袖が焦げている。

『警告。右腕部、限界稼働時間タイムリミットまで残り3分。……兄さん、派手に散るつもりですか?』

「散るかよ。……俺は、あいつに『待ってる』って言ったんだ。約束破ったら、あの世で説教されちまう」

遼司は不敵に笑い、巨人に突っ込んだ。

「ケン太! 星! 左右に散れ! 奴の足を崩すぞ!」

「了解! 天秤流・旋風!」 星が壁を蹴って跳躍し、巨人の膝関節に斬りかかる。

「任せて! ……食らえ、特製パチンコ弾!」 ケン太も物陰から、閃光弾や粘着弾を撃ち込み、巨人のセンサーを撹乱する。

『排除! 排除!』

巨人がドリルを振り回す。 コンクリートの柱が飴細工のように粉砕され、瓦礫が雨のように降り注ぐ。

「おっと!」

遼司はスライディングで攻撃を回避し、巨人の懐に潜り込んだ。

「検札の時間だ! ……キセル乗車は許さねえぞ!」

遼司は右拳を、巨人の腹部に叩き込んだ。 「パイルバンカー・改」。 カインの演算能力で、敵の装甲密度が最も薄い一点を瞬時に解析し、そこへ全エネルギーを注ぎ込む。

ズドォォォォォォン!!

衝撃波が巨人の体内を駆け巡り、背中側から黒い噴煙が吹き出した。

『ガガガッ……!? エラー、装甲破損……!』

巨人がよろめき、膝をつく。

「今だ! 星、トドメを!」

「御意! ……神気解放! アストレアの断罪!」

星が上空から急降下し、日本刀を巨人の単眼に突き立てた。 光の奔流が巨人の頭部を貫き、システム回路を焼き切る。

ズズズ……ン。

巨人は機能を停止し、その場に崩れ落ちた。 黒い霧となって消滅していく。

「……ふぅ。やったか」

遼司は、膝に手をついて荒い息を吐いた。 右腕が、悲鳴を上げるように軋んでいる。

「局長! 大丈夫ですか!?」 星が駆け寄る。

「ああ、なんとかな。……だが、まだ終わりじゃなさそうだ」

遼司が顔を上げると、崩れた天井の穴から、さらなる絶望が覗いていた。 黒い太陽から、次々と新たな「巨人」たちが投下されているのだ。 一体、二体、三体……。 駅を埋め尽くすほどの軍勢。

「……嘘でしょ」 ケン太が震える声で呟く。

『システムは本気です。……このエリアごと、強制削除フォーマットするつもりです』 カインの声も硬い。

多勢に無勢。 満身創痍の三人に対し、敵は無尽蔵。 撤退すべき状況だ。 だが、ここを引けば、八千代が帰ってくるための「ゲート」が破壊される。

「……ケン太。星」

遼司は、二人を振り返らずに言った。

「お前らは逃げろ。……ここは俺が食い止める」

「なっ……! 何を言ってるんですか! 一緒に戦います!」 「そうだよ師匠! 僕だって!」

「命令だ!」

遼司が一喝した。

「八千代が戻ってきた時、迎えてやる場所が必要なんだ。……もしここがダメでも、お前らが生きていれば、また別の場所で会えるかもしれん。だが、全滅したら終わりだ」

遼司は、懐から「探偵事務所の鍵」を取り出し、ケン太に投げ渡した。

「預けとくぞ。……俺が戻るまで、店番頼んだ」

「し、師匠……っ!」 ケン太が鍵を握りしめて泣く。

「……分かりました。ですが、局長」

星は、遼司の背中に向かって深く頭を下げた。

「貴方が死んだら、私が冥界まで追いかけて叩き起こしますからね。……絶対に、生きて帰ってください」

「へっ。……怖い部下を持ったもんだ」

星はケン太を抱え、非常口へと走った。 二人の姿が見えなくなると、遼司は一人、改札口の前に座り込んだ。

右腕のエネルギー残量は、残りわずか。 霊子銃の弾も尽きかけている。

「……さて。ここからは、親父の独壇場だ」

遼司は、タバコ(電子データ)を咥えて火を点けた。 紫煙が、崩壊した駅のホームに揺らめく。

巨人の群れが、地響きを立てて迫ってくる。 絶望的な光景。 だが、遼司の心は不思議と穏やかだった。

(八千代。……今頃、あっち(現実)で哲人たちに会えてるか?)

彼女が「ありがとう」を伝えている姿を想像するだけで、力が湧いてくる。 俺は、ここで待つ。 お前が笑顔で「ただいま」と言って帰ってくる、その瞬間まで。

「カイン。……付き合えよ。これが最後の大仕事だ」

『……了解。バッテリー残量0%まで、戦闘行動を継続します。……兄さん、貴方は本当に、効率の悪い人だ』

「褒め言葉として受け取っておくぜ」

遼司は立ち上がり、最後の力を振り絞って構えた。

「いらっしゃいませ! ……ここから先は、阿武隈探偵事務所の貸切だ! 文句がある奴は、俺の拳で聞いてやる!」

たった一人の防衛戦。 その背中は、どんな城壁よりも高く、頑強に、愛する妻の帰路を守り続けていた。


この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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