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【完結済】多分、異世界転生もの。  作者: 久遠 魂録


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49/102

世界で一番、温かい弾丸

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

封筒から溢れ出したのは、破壊の閃光ではなかった。

それは、圧倒的な「日常」の洪水だった。

「な……んだ、これは……!?」

巨大な異形と化していたナイが、眩い光に焼かれて後退る。

光の中から、無数のホログラム映像が浮かび上がった。

公園で遊ぶ子供たち。

スーパーのタイムセールに並ぶ主婦。

仕事帰りのサラリーマンが飲むビール。

教室で交わされる秘密の会話。

そして、夕暮れの食卓を囲む、ありふれた家族の笑顔。

それらは、哲人がこのSAGA SAGAを創る際に、基盤データ(種)として埋め込んだ「彼が愛した世界の記憶」だった。


「熱い……! 重い……! やめろ、僕の中に『意味』を流し込むな!」

ナイが絶叫する。

混沌カオスとは、無秩序であり、意味を持たない虚無だ。

そこに、人間たちの「生きる意味」や「温もり」という、極めて高密度の概念データが強制インストールされていく。

それは、虚無の神にとって猛毒に等しい苦痛だった。

「……そうか。これが、お前が見せたかった景色か、哲人」

遼司は、光の洪水の中で、目を細めた。

この世界は、単なる逃避場所じゃない。

哲人は、現実世界の「辛さ」も「理不尽」も知った上で、それでも「人間って、捨てたもんじゃないよ」と肯定するために、この箱庭を作ったのだ。

『じいちゃん、ばあちゃん。いつかこの世界で、また会いたいな』

光の中で、幼い哲人の声が聞こえた気がした。

この招待状は、祖父母を「理想郷ユートピア」に招くためのものではない。

「僕の大好きな、この泥臭くて温かい人間世界を、一緒に守ってほしい」という、切実な願いだったのだ。

「……受け取ったぞ。お前の自慢話ゆめ

遼司は、空になった金色の封筒を、霊子銃レイシガンのマズルに被せた。

そして、カインから託された右腕で、しっかりと銃を支える。

「八千代、星! 道を開けろ! この荷物は、俺が直接ねじ込む!」

「はい、あなた!」

「御意!」

八千代が祈るように手を組むと、彼女の周囲に展開していたディテクターの光が、遼司へと収束した。

星が日本刀を天に掲げ、残る全ての神気を遼司の背中へと注ぎ込む。

「ナイ! お前が馬鹿にした『甘っちょろい夢』の味……たっぷりと味わいな!」

遼司の右腕が黄金に輝き、霊子銃が限界を超えて唸りを上げる。

装填されたのは、哲人の「夢」、カインの「最適化」、八千代と星の「祈り」、そして遼司自身の「愛」。

全てが一つになった、SAGA SAGA最強の弾丸。

配達完了デリバリー・コンプリートォォォォォ!!」

ズガァァァァァァァン!!

放たれたのは、一直線の光の奔流。

それは、ナイが展開していた「絶望の闇」を紙のように突き破り、異形の中心核コアへと突き刺さった。

『ギャァァァァァァァ!!』

ナイの断末魔が、第3層全体を震わせる。

だが、その叫びは恐怖によるものではなかった。

『温かい……! 苦しい……! なんだこれ、ウザい、重い、面倒くさい……! でも……!!』

光が、ナイの巨体を内側から浸食していく。

黒い泥が浄化され、金色の粒子となって空へ舞い上がる。

腐敗していた「世界樹」もまた、光を浴びて瑞々しい輝きを取り戻していく。

「あはは……あはははは! 負けた! 僕の『虚無』が、『日常』なんかに塗り潰されちゃった!」

光の中で、ナイは少年の姿に戻っていた。

彼は、消滅していく自分の手を見つめながら、清々しいほどに笑っていた。

「すごいよ、人間。やっぱり君たちは……最高の『バグ』だ」

パァァァァン……。

最後の光が弾け、鏡面世界に静寂が戻った。

ナイの姿は消え、黒い泥も一掃されていた。

後に残ったのは、美しく輝く世界樹と、満身創痍の三人の英雄たちだけ。

「……終わっ、たか……?」

遼司はガクリと膝をついた。

霊子銃が手から滑り落ち、カランと乾いた音を立てる。

右腕の輝きは消え、ホムンクルスの身体は限界を迎えていた。

「局長!」

八千代が駆け寄り、崩れ落ちる遼司を抱き留める。

「……へへっ。悪いな、八千代。ちょっと、働きすぎたみたいだ」

「馬鹿……! 大馬鹿者です、貴方は!」

八千代は涙を流しながら、遼司の顔を撫でた。

「でも……最高にかっこよかったですよ。私の、自慢の夫です」

星も、刀を杖にして近寄ってきた。

「見事でした、局長。貴方の放った『光』は……アストレアの正義をも凌駕する、真の『救済』でした」

遼司は、二人の顔を見て、満足げに微笑んだ。

そして、ゆっくりと目を閉じた。

「……哲人。手紙、ちゃんと届いたか……?」

彼が意識を手放そうとした、その時。

『ええ。素晴らしい配達でしたよ、お爺様』

凛とした、しかしどこまでも優しい女性の声が、天から降ってきた。

世界樹が輝き、その根本から光の道が伸びる。

そこには、エプロン姿の女性――オーナー・憂が、慈愛に満ちた微笑みを浮かべて立っていた。

「さあ、いらっしゃい。頑張った子供たちには、ご褒美が必要ね」

憂が手をかざすと、遼司たちの傷ついた身体が、柔らかな光に包まれた。

それは、全宇宙最強の女神による、絶対的な「癒やし」の権能。

物語は、まだ終わらない。

混沌を退けた彼らを待つのは、創造主の妻にして、この世界の真なる支配者との「対面」だった。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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