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【完結済】多分、異世界転生もの。  作者: 久遠 魂録


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世界樹と、宛先のない神様

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

鏡面世界の最奥。

そこに聳え立っていたのは、天と地を繋ぐ巨大な「樹」だった。

その樹は、物理的な植物ではない。

幹は無数の光ファイバーと数式で編み上げられ、枝葉は銀河の星々のように輝いている。

SAGA SAGAを支える基盤システム――「Grandchild Mesh(孫のメッシュ)」の核。

だが、その美しい樹の根元は、ドス黒い泥(楔)に侵され、腐敗し始めていた。

「……ひどい有様だな」

遼司は、樹の根元を見上げて顔をしかめた。

腐敗した根からは、絶えず黒いノイズが溢れ出し、美しい鏡面世界を汚染し続けている。

「ようこそ、最終ステージへ! 待ちくたびれたよ、お爺ちゃん!」

樹の根元に設けられた、玉座のような黒い岩。

そこに、少年――ナイが足を組んで座っていた。

彼の手には、まだあの黒いテディベアが抱かれている。

「カインはどうしたの? ……ああ、そうか。君の中で『養分』になったんだね」

ナイは、遼司の右腕に宿る微かな光を見て、ニヤリと笑った。

その笑顔には、愛着も悲しみもない。ただ、予想外の展開を楽しむ無邪気な残酷さだけがある。

「弟からの仕送りだ。お陰で、身体が軽くてしょうがねえよ」

遼司は霊子銃レイシガンを構え、一歩前に出た。

八千代と星も、左右に展開して戦闘態勢をとる。

「ナイ。ここでお前を倒して、この世界への『不法投棄』を止めさせてもらう」

「倒す? 僕を?」

ナイは可笑しそうに肩を震わせた。

そして、ゆっくりと立ち上がり、両手を広げた。

「君たちは勘違いしているよ。僕はね、この世界を壊したいわけじゃないんだ」

「……何?」

「僕はただ、この世界を『完成』させてあげようとしているだけさ」

ナイが指を鳴らすと、背後の世界樹が激しく脈動した。

樹の幹に、無数の亀裂が走り、そこから赤黒い光が漏れ出す。

「このSAGA SAGAは、君の孫……哲人くんが作った『愛と正義の箱庭』だ。でもさ、愛とか正義なんて、所詮は人間が勝手に決めた『ルール』でしょ?」

ナイの瞳が、深淵の闇色に染まっていく。

「宇宙の真理は、そんな甘っちょろいもんじゃない。混沌、無秩序、理不尽……それが本当の『リアル』だ。僕は、哲人くんの夢想に、本当のリアル(アザートースの概念)を混ぜて、もっと面白い世界にアップデートしてあげようとしてるんだよ」

「……ふざけるな」

遼司の低い声が響いた。

「孫が……哲人が必死に作った夢を、『甘っちょろい』だと?」

遼司の脳裏に、病床の自分に、目を輝かせて未来の話をしてくれた幼い哲人の顔が浮かぶ。

『おじいちゃん、僕ね、誰も悲しまない世界を作るんだ!』

あの子の夢は、逃避じゃない。

現実の辛さを知った上で、それでも希望を信じようとした「祈り」だ。

「夢を見るのが、人間の特権だ。理不尽な現実リアルに負けねえために、俺たちは夢を語り、手紙を書き、愛を叫ぶんだよ!」

遼司は霊子銃のシリンダーを回した。

カチリ、と硬質な音が鳴る。

「お前ら神様には、その『切なさ』が分からねえんだろ。だから……お前はいつまで経っても、宛先のない『迷子』なんだよ!」

「迷子……。僕が?」

ナイの表情から、笑みが消えた。

その瞬間、第3層の空気が凍りついた。

圧倒的な、呼吸すら許さないほどの神威プレッシャー

「……生意気だね、NPC」

ナイの姿が、ノイズと共に崩れ落ちた。

少年の姿が解け、その内側から、名状しがたい「何か」が溢れ出す。

それは、特定の形を持たなかった。

触手であり、泥であり、星雲であり、絶叫だった。

見る者の精神を削り取る、原初の恐怖。

『教えてあげるよ。迷子になるのは、地図(理性)を持った人間だけだ』

巨大な異形と化したナイが、世界樹を覆い尽くすように膨張した。

『僕ら(旧支配者)は、地図なんて必要ない。僕らが歩く場所が、すべて混沌(道)になるんだから!!』

ズオオオオオオオ!!

異形から放たれた衝撃波が、鏡面の大地を粉砕した。

八千代と星が吹き飛ばされる。

遼司は、カインから託された右腕で衝撃を受け流し、歯を食いしばって耐えた。

「くっ……! デカすぎて、どこを狙えばいいか分からねえな!」

『狙う必要はない。すべてが僕だ』

四方八方から、黒い泥の触手が遼司に襲いかかる。

逃げ場はない。

「局長! ここは一度撤退を!」

星が叫ぶが、遼司は首を振った。

「逃げねえよ。……ここが、最期の配達先だ」

遼司は、霊子銃をホルスターに戻した。

そして、懐から一枚の「金色の封筒」を取り出した。

哲人からの「招待状」。

まだ、開封していない最後の手紙。

「賭けに出るぞ。……哲人の夢(この手紙)が、この混沌を晴らす『特効薬』だと信じてな」

遼司は、迫りくる神話的恐怖を前に、静かに封筒の封を切った。

開封オープン!!」

その瞬間。

封筒の中から、目が眩むほどの「純白の光」が溢れ出した。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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