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【完結済】多分、異世界転生もの。  作者: 久遠 魂録


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じいちゃんの裏技(デバッグ・コード)

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

黒電話の受話器から、戸惑いに満ちた孫の声が聞こえる。

『じいちゃん……? なんで……。じいちゃんは、30年前に死んだはずじゃ……』

「ああ、死んださ。ちゃんと葬式もあげてもらった。……坊主、お前が棺桶に『折り紙の手裏剣』を入れてくれたのも覚えてるぞ」

『……ッ!』

電話の向こうで、哲人が息を呑む気配がした。それは、哲人と祖父しか知らない、小さな秘密の記憶だ。

これで十分だった。論理的な説明はいらない。情動が、彼を「本物」だと認識した。

「今はな、お前が作ったこの世界の『警備員』みたいなことをやってる。……詳しいことは省くが、今、お前の世界の裏側(第2層)が、とんでもない『ゴミ屋敷』になっちまっててな」

ズドオオオオオン!

家の屋根が悲鳴を上げた。

外にいる神話生物の触手が、哲人の記憶領域シェルターをこじ開けようとしているのだ。天井からパラパラと、ノイズの砂が落ちてくる。

「時間がない。哲人、教えてくれ。お前、この世界を作るときに『緊急避難用の抜け道』を作らなかったか? デバッグ用の裏口とか、没になったデータの廃棄場とか」

『……ある。あるけど……そこは』

「どこだ?」

『井戸……。庭にある古井戸だ。そこは、僕が世界の基盤データ(Grandchild Mesh)を書き換えるために作った、開発者専用のバックドア(裏口)に繋がってる』

遼司は、昭和の茶の間の窓から庭を覗いた。

枯れ草の生えた庭の隅に、古びた石組みの井戸がある。

「でかした。流石は俺の孫だ」

『でも、待って! そのルートは未完成なんだ! 通り抜けるには、パスコードがいる。それも、論理的なコードじゃなくて、僕が子供の頃に大切にしていた……』

「パスコード?」

『……「魔法の言葉」だ』

哲人の声が、少しだけ恥ずかしそうに震えた。

天才プログラマーが、世界の核を守るために設定した最強の鍵。それは、複雑な暗号ではなく、彼にとっての「原風景」だったのだ。

「分かった。……心当たりなら、ある」

ドガシャァァァン!!

ついに、茶の間の天井が崩落した。

巨大なナメクジのような神話生物の顔が、ヌラリと室内に入り込んでくる。無数の目玉が、遼司たちを捕捉した。

『排除……バグ……排除……』

「チッ、時間切れか! ありがとな、哲人! 長生きしろよ!」

『じいちゃん! 死なないで!』

遼司は受話器を叩きつけ、八千代の手を引いた。

「行くぞ! 庭の井戸だ!」

「はい!」

八千代が着物の裾をまくって走る。

星が日本刀で瓦礫を弾き飛ばし、血路を開く。

「局長! 奴の触手が来ます!」

背後から、粘液まみれの触手が無数に伸びてくる。

家屋は完全に崩壊し、昭和の幻影はデジタルの塵となって消え去った。

三人は庭へと転がり出た。

目の前には、古びた井戸。その底は深く、暗い闇が広がっている。

「ここがバックドア……! でも、どうやって開けるんですか!」

星が井戸の縁に掴まり、底を覗き込む。物理的な底が見えない。ただの穴だ。

「パスコードが必要なんだよ! ……哲人が子供の頃、俺と一緒によく唱えてた言葉だ!」

遼司は井戸の縁に立ち、迫りくる巨神に向かって仁王立ちになった。

そして、腹の底から大声を張り上げた。

「開けゴマ! ……なんて洒落たもんじゃねえぞ!」

遼司の脳裏に、幼い哲人の笑顔が浮かぶ。

テレビヒーローの真似をして、二人で遊んだ日々。

正義の味方が、ピンチの時に逆転するための「魔法の言葉」。

「『スーパー・ウルトラ・ミラクル・パンチ』!!」

その瞬間。

井戸の底から、猛烈な光の柱が噴き上がった。

『アクセス承認。開発者権限デベロッパー・オーソリティ、一時解放。』

無機質なシステム音が響き、井戸の闇が、青く輝く「データの滑り台」へと変貌した。

「うわあああ! 本当に開いた!?」

星が驚愕の声を上げる。

「行くぞ! 乗り遅れるな!」

遼司は八千代を抱き寄せ、星の背中を蹴飛ばして、光の中へ飛び込んだ。

ズオオオオオ……!

彼らが飛び込んだ直後、神話生物の巨大な触手が井戸を叩き潰した。

だが、遅かった。

光の粒子となった三人は、既に第2層の物理法則を無視した超高速で、システムの深淵へと滑り落ちていた。

***

光のトンネルの中。

遼司たちは、猛スピードで流れるデータの奔流に揉まれていた。

「局長! なんですか、あのパスコードは!」

星が叫ぶ。

「哲人が5歳の時に考えた最強の必殺技だ! まさか、世界の裏口の鍵になってるとはな!」

遼司は笑った。

(あいつ、やっぱりロマンチストだ。……変わってねえな)

「でも、局長。この先はどこへ繋がっているんですか?」

八千代が、遼司の腕の中で尋ねる。

「哲人の話じゃ、世界の基盤データ……つまり『Grandchild Mesh』の核だ。そこに辿り着けば、この腐った第2層を浄化する手がかりがあるかもしれん」

その時、光のトンネルの出口が見えた。

その先には、今までの「ゴミ捨て場」とは異なる、静謐で神々しい空間が広がっていた。

そこは、第3層「混沌の境界」。

憂(大神様)の膝元であり、アザートースが封印されている、この世界の最深部。

そして、そこで彼らを待ち受けていたのは――。

「ようこそ、英雄たち。……いや、お爺ちゃんたち」

出口の広場に、一人の少年が立っていた。

ナイではない。

黒いスーツを着た、遼司とよく似た雰囲気を持つ、冷徹な青年のホムンクルス。

「初めまして、オリジナル(原型)。僕の名前は**『カイン』**。旧支配者が作った、君の『弟』だよ」

遼司の複製データから作られた、敵のセキュリティソフト。

最深部の門番が、静かに霊子銃を構えていた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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