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【完結済】多分、異世界転生もの。  作者: 久遠 魂録


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極限の精密性

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

地下コアの空洞に響く、星の刀の音。

エレベーターから飛び出した早乙女 星は、旧き教団のプレイヤー集団の中へ、迷いなく突入した。その動きは、群衆の中の一本道を切り開く、光速の流星のようだ。

「邪悪なる意思は、裁きを逃れられない!」

星が日本刀を振るうたびに、黒いローブのプレイヤーが次々と倒れ、その身体はデータ粒子となって霧散していく。彼女の刀は、感情を持たない機械的な正確さで、敵の急所や戦闘能力を奪う箇所を的確に斬り裂いていた。

彼女の剣技の速さは、私が持つホムンクルスの予測回路でも追いきれないほどだ。星の鞘に刻まれた天秤の意匠は、彼女が**力の大小ではなく、その行為の『悪意の度合い』**によって、敵を裁いていることを示唆していた。彼女の剣は、この世界の正義そのものだ。

「局長!制御パネルを!」星の短い命令が、戦闘の轟音の合間に響く。

私は、星が切り開いてくれた道を使い、コアの制御パネルへ向かう階段を駆け上がった。しかし、プレイヤーたちのうち、三体が星の攻撃をかわし、私の方へと回り込んできた。

「愚か者め!貴様の役割は、単なるトリだ!」

プレイヤーたちは、手にしていた異形の銃を私に向け、一斉に発砲した。

【戦闘予測。被弾確率:高。回避行動:不可能。】

ディテクターが警報を鳴らす。この至近距離では、私のホムンクルスの肉体であっても、全てを回避するのは不可能だ。

私は、とっさに階段の手すりを蹴り、身を斜めに捻った。銃弾は私の肩と脇腹を掠めた。衝撃が走る。ホムンクルスの肉体は、痛みこそ感じないが、データ上の損傷を警告している。

(まずい。このままではコアに辿り着けない。)

その瞬間、私のホムンクルスの思考回路に、八千代さんの通信が割り込んできた。

【遼司さん!佐伯が解析した緊急情報です!コアの制御パネルは、物理的な防御が厚い。霊子銃の標準出力では破壊できません!しかし、パネル右上の『緊急シャットダウンノード』は、極めて脆弱です!】

佐伯のホログラムが、私の目の前の空間に展開された。ターゲットである制御パネル全体ではなく、その隅にある、わずか1センチ四方の小さなノードを指し示している。

「そのノードは、緒妻哲人氏が組み込んだ、『おとぎ前線』の緊急停止プロトコルが埋め込まれている可能性があります!そこを狙ってください!」八千代さんの声は、初めて微かに動揺していた。

(緒妻哲人……私の孫。)

私は、三体のプレイヤーの銃撃を避けながら、霊子銃の銃口を、遠くの制御パネルの隅にある1センチのノードに合わせた。距離にして約30メートル。周囲は、星とプレイヤーの激しい交戦で舞い上がる塵と、コアの放つ青い光で歪んでいる。

私の全ては、郵便局員時代に培った**『精密性』**にある。何万という郵便物を、瞬時に、正確に仕分けした集中力。

私は、呼吸を止めた。心臓の鼓動は安定している。感情はゼロ。

狙撃は、一瞬の情けも、迷いも許されない。

一人のプレイヤーが、私に肉薄してきた。私は、そのプレイヤーの額を霊子銃の台座で叩きつけ、体勢を崩した。その直後の、ほんの0.2秒の静寂を利用する。

パン!

弾丸は、螺旋を描きながら、30メートル先の制御パネルに吸い込まれていった。

青い光が弾け、制御パネル全体が激しい火花を散らす。そして、地下コア全体を覆っていた青い光が、急速に弱まっていった。

「ノード、破壊成功です!局長!」星の声が、心なしか安堵に満ちていた。

コアの周囲で儀式を執り行っていたプレイヤーたちは、力を失い、その場に崩れ落ちた。彼らの身体から、黒い粘液が流れ出し、地面を汚していく。

「任務完了……ではない。」

私は、ホムンクルスの肉体に残る損傷データを無視し、星の方へ振り返った。彼女は、最後のプレイヤーを無力化し終えたところだった。

「局長、どういう意味ですか。」星は、刀の血を払いながら、警戒を解かなかった。

八千代さんの通信が、再び割り込む。

【佐伯の最終解析結果。コアのエネルギーは停止しましたが、旧き教団の信仰波が、カフェの真上にある『特異点』……美琴の存在を強く感知しています!彼らはコアではなく、美琴の『神の権能』を直接奪い取るプロセスに切り替えた可能性があります!】

「美琴!?」

「彼らは、最初の目的を放棄し、最も簡単な方法に切り替えた。」星の顔に、初めて焦りの色が浮かんだ。

「局長、急ぎます。美琴様を、彼らの汚れた手から守らなければなりません。」

私たちは、再びエレベーターへと駆け戻った。上昇するエレベーターの揺れの中で、私は八千代さんに尋ねた。

「八千代、美琴が神の一柱であることは、どこまで真実なんだ。」

八千代さんは、躊躇しながら答えた。

「美琴様は、この世界の創造神ショロトル様の系譜に連なる、**狐神族きつねがみぞく**の次世代のウカノミタマ様……つまり、食と豊穣を司る神です。彼女が持つ権能は、このSAGA SAGAの世界の安定に不可欠。もし彼女の力が旧き教団に奪われれば、世界は食糧もエネルギーも失い、崩壊します。」

(豊穣の神……私の孫が、そんな存在の神々が作った境界線の上に、自分のシステムを構築していた。)

エレベーターが、再びカフェのスタッフ通路に到着した。扉が開くと、そこには誰もいないはずなのに、奇妙な甘い香りが満ちていた。

そして、その通路の奥、カフェの通用口の前で、美琴が一人、うつむいて立っていた。

彼女の周囲には、黒ローブのプレイヤー三人が、彼女を取り囲んでいる。プレイヤーたちの手には、異形の魔術的な装置が握られていた。

「見つけたぞ、豊穣の女神よ。お前の権能は、我が主の復活の贄となる!」

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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