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【完結済】多分、異世界転生もの。  作者: 久遠 魂録


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前線カフェと境界線

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

廃墟となったパチンコ店から『SGMA』の地下中枢へ戻った時、私のホムンクルスの肉体は微かな熱を帯びていた。隣を歩く早乙女 星は、刀の柄から一切手を離さず、無力化された黒ローブのプレイヤーたちを冷たい目で見下ろしていた。

八千代さんは、カプセル型エレベーターの扉が開くや否や、駆け寄ってきた。

「遼司さん、無事ですか?霊子銃のオーバーロードを懸念していましたが、損傷はありませんね。」

彼女の事務的な言葉には、微かに安堵の色が混じっていた。

「ああ、問題ない。全て佐伯のデータ通りだ。早乙女 星も、完璧に任務を遂行してくれた。」

私がそう言うと、星は一礼する。「当然です、局長。正義の遂行に、迷いはありません。」

八千代さんは、プレイヤーたちを佐伯が待つ解析室へと引き渡すよう指示を出すと、私に熱いタオルと新しいマグカップを手渡した。

「ブラックでよろしいですか?少し濃いめに淹れてみました。……最初の実戦で、あなたは極限の集中力を強いられました。ホムンクルスとはいえ、精神的な疲労は残ります。」

(濃いめ……私が疲れた時に好んでいた、ブラックの淹れ方だ。)

八千代さんは、やはり私が知るはずのない、かつての私の生活習慣を熟知している。私はそれを問い詰めることはせず、ただ温かいマグカップを握りしめた。

「佐伯、プレイヤーから何か情報は得られたか。」

佐伯智春は、解析室のホログラムスクリーンを操作しながら、淡々と報告した。

「制圧した三体のプレイヤーは、全員が重度の信仰波に侵食されており、理性を保っていません。しかし、彼らの身体に残されたデジタル・タグから、次の儀式のターゲット情報を抽出しました。」

佐伯が投影したデータは、SAGA SAGAの世界の地図だった。その中心部にある、巨大な商業エリアの一角が点滅している。

「次なる標的は、このSAGA SAGAの世界で最も人気のあるデジタルカフェ、**『前線cafe SAGA SAGA店』**です。」

「カフェ?」星が訝しげに眉をひそめた。「なぜ、カフェなのですか?彼らの儀式は、常に隔離された場所で行われるはず。」

「不明です。」佐伯は即答した。「データ上、そのカフェは極めて高いデジタルアクセスポイントであり、多くのプレイヤーが集う場所です。儀式を行うには、あまりにも非効率的です。しかし、プレイヤーが意識的に残したタグは、間違いなくこの場所を指し示しています。」

八千代さんも首を傾げる。

「カフェでの儀式は、確かに前例がありません。ですが、旧き教団は、儀式に使う『場』を選びません。最も重要なのは、その場所が持つ**『デジタル的な特異性』**なのです。」

佐伯が、前線カフェの周辺システムデータを拡大表示した。そのデータの中に、私は見慣れない専門用語の羅列を見つけた。

「このコードはなんだ。『W-Junction Protocol』……『Grandchild Mesh』……」

私は、思わず口に出してしまった。『Grandchild Mesh』。それは、私が他界する前に、次男の子、つまり私の孫が科学者として成功を収めた頃、雑誌で見た彼の論文の専門用語に酷似していた。

佐伯は、表情一つ変えずに答えた。

「『Grandchild Mesh』。これは、SAGA SAGA世界の基盤となる、特殊なデータ統合構造のコードネームです。およそ30年前に、この世界の構想設計者が使用していた古いプロトコルが、一部のノードで痕跡を残しているのです。」

(構想設計者……私の孫が、この世界の創設者だった。)

八千代さんが、私の顔を一瞬不安げに見つめた。まるで、私が何かを思い出しかけたことを察したかのように。

「局長。そのコードの由来は、目下の任務とは関係ありません。重要なのは、旧き教団が、この前線カフェの持つ『特異性』を利用し、新たな偶像の復活を企てていることです。」

「彼らは、何を狙っている?」

「カフェの地下にある、**『試作型エネルギーコア』**です。」佐伯が断言した。

「旧き教団は、カフェの地下コアを暴走させ、SAGA SAGA全体のシステムを一時的に『混沌』の状態に陥れるつもりでしょう。その隙に、別の旧支配者の偶像を、この世界に定着させようとしています。」

八千代さんが、新たな指令を出した。

「遼司局長、早乙女 星。次の任務です。直ちに『前線cafe SAGA SAGA店』へ急行し、地下コアの制御を奪い、旧き教団によるシステム改変を阻止してください。カフェは、現世のプレイヤーも多く利用しています。**『探偵』**として、周囲のプレイヤーに動揺を与えないよう、冷静な行動を。」

私はブラックコーヒーを一気に飲み干した。口の中に広がる苦味が、私の新たな責任感を呼び起こす。

「了解した。行くぞ、星。」

「はい、局長。」星は、深く頷いた。彼女の瞳には、一切の迷いがない。その厳格な正義が、私をこの混沌の世界での任務へと駆り立てるのだった。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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