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【完結済】多分、異世界転生もの。  作者: 久遠 魂録


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100/102

100個目のスタンプと、遠い日の約束…

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

阿武隈探偵事務所のカウンター。 遼司は、八千代が大切にしていた「スタンプカード」を眺めていた。 そこには、再会してから積み重ねてきた日々の印が、今日でちょうど100個並んでいる。

「……100日、か。長いようで、あっという間だったな」

「ええ。でも、中身の濃い100日でしたわ。……あなたと一緒にいられる、100日ですもの」

八千代が、遼司の肩に顎を乗せてカードを覗き込む。 二人の距離は、以前よりもずっと近くなっていた。

「……なぁ、八千代。俺は今、幸せだ」

不意に漏れた遼司の言葉に、八千代は嬉しそうに目を細めた。 強情で不器用な夫が、これほどストレートに感情を口にするのは、初めて出会って約70年前から、阿武隈遼司になる以前の30年もの年月がある現実世界でも滅多になかったことだ。

「……私もです。……でも、一つだけ。心残りがあるとするなら」

「哲人、か」

「はい。……あの子、今頃どうしているかしら」

その時。 事務所の空気が、微かに震えた。 それは、バグでも侵入者でもない。 世界の管理者である「哲人」が、システムに深くアクセスした時にだけ生じる、温かい共振。

『報告。……システム・ログに、管理者権限による特殊命令が書き込まれました。……実行時期は「未定」。内容は……「全住人への祝福」』

カインが、いつになく穏やかな声で告げる。

「全住人への祝福……? 何だそりゃ」

「……あの子らしいわね」

八千代は、窓の外を見た。 そこには、アトランティア市の美しい夜景が広がっている。 かつては「偽物の街」だと思っていた。 けれど、今ここで笑い、泣き、生きている人々にとっては、ここが唯一無二の現実だ。

哲人は、このSAGASAGAという仮想現実世界の創造主として、最後に何をしようとしているのか…。

***

現実世界。 哲人は、深夜の書斎で一人、モニターを見つめていた。 目の前には、SAGA SAGAのメインサーバーのステータス画面。

「……準備はできた。……あとは、タイミングだけだ」

哲人は、傍らに置かれた遼司(哲信)と・初喜(八千代)の遺影に微笑みかけた。 彼の身体は、長年の心労と過労により、確実に限界を迎えつつある。 だが、その瞳には、子供のような期待が宿っていた。

「祖父ちゃん、祖母ちゃん。……最高のプレゼントを、用意したよ。……僕がSAGA SAGAの世界を我が子達に託す前に、せめてこれだけは…」

哲人はキーボードを叩き、一つの巨大なプログラム・パッケージを「予約実行」に設定した。 ファイル名は、『The Grand Reunion(大再会)』。

「……僕も、いつの日かしたら、そちらへ行くよ。」と言い、その後、小声で「そんなに待たせる事はないと思う…。」と呟いた。「……憂さん、準備はいいかい?」

隣に座っていた憂(の投影アバター)が、静かに頷いた。

「ええ、哲ちゃん。……貴方の想いは、もうすぐ届くわ。……あの世界で、最高の形で」

***

SAGA SAGA、夜明け。 遼司は、夢の中で誰かの声を聞いた気がした。 懐かしくて、誇らしげな、孫の声。

「……あなた、朝ですよ。起きてください」

八千代の声で目を覚ますと、窓の外には不思議な光が満ちていた。 それは、朝焼けとは違う、世界全体が祝福されているような、黄金色の光。

「……何だ? 何が起きてる」

「わかりません。……でも、とても温かくて、懐かしい匂いがします」

遼司と八千代は、手を取り合って事務所の外に出た。 そこには、星やケン太、そして街の人々が集まり、空を見上げていた。

「……さあ、行こうぜ、八千代。……何が起きるかは分からねえが、悪いことじゃねえ。……哲人の野郎が、何か仕掛けやがったんだ」

遼司は、八千代の手を強く握りしめた。

八千代が人間と姿から、遼司と同じ魂の存在になって100日という節目を越え、物語はいよいよ、究極の「再会」へと向かう。

アトランティアの空から、祝福の鐘の音が聞こえ始めていた。 それは、遠い日の約束が果たされる、合図だった。


この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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