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──────────────────────

【魔童 神樹】


年齢(25)

種族(人間)

性別(男)

職業:魔王(職業は現在ロックが掛けられてます)

指標:0

『履歴』

職業:[自宅警備員]から職業:[魔王]へとクラスチェンジしました。

──────────────────────

 人生とは不平等であり、理不尽の連続である。

 これは、俺が10歳の頃に悟ったこの世の真実である。

 早くに母を亡くし、それに続くように父も亡くした。

 親戚は親の財産目当てで群がり。

 無いとわかれば離れていく。

 親の財産は成人するまで弁護士が管理することになっていたため取られることはなかったが、引き取り手がいない俺は、施設へと入れられた。

 施設では、周りと強調できないからとハブられ、施設の長は補助金目当てで施設の維持費は最低限。

 貞操を狙われる事もあれば、暴力も日常茶飯事、食事を抜かれる事もしばしば。

 俺を、両親に借りがあると引き取った男は犯罪に加担させても捕まらないコマが欲しかっただけでいろんなことをさせられた。

 義務教育を終えてからはフリーターとなり生計を立て、その金でなんとか高校認定資格を得ることができた。

 就職してからは、上司にこき使われミスを押し付けられることもあれば、手柄を取られることなんてしょっちゅう。

 成人してやってきた弁護士から親の財産を譲り受けると、またも親戚連中がすり寄ってくる。

 あの時助けた恩を……などど抜かしてくる始末。

 詐欺まがいの手法で遺産を掠め取ろうともしてきた。

 信じられる物など無い。

 幸せそうなやつを見ると理不尽だとも思うし不公平だとも思う、だがそれを叫んだ所でこの世は何も変わらない。

 虚しくなるだけだ。

 一人だけの世界に没頭し、誰とも関わらずに生きてきた。

 別に恨んでる訳でも憎んでるわけでもない。

 ただ無関心でいたい。

 そんな静かな人生を過ごしたかっただけなのに。

「なんで俺が、魔王なんだよ!」

 そもそも、職業なのか自宅警備員って!

 ただ、親から相続した家の一角で、必要最低限の外出と部屋と風呂とトイレを行き来する毎日。

 日がな一日ゲームして動画見てネット・サーフィンをしていただけなのに、自宅警備員ってなんだ!

 引きこもりでいいだろそこは!

 それに魔王ってなんだ!

 クラスチェンジしましたっていつ許可したよ!

「いえいえ、割とぴったりじゃないですか魔王って、誰も信じない、いっその事全て壊してやるーってどうでしょう?」

 それただの犯罪者だろ。何でそんなめんどくさいことをしなきゃならんのだ。

「ふざけるな、何が魔王だ。俺は他人に無関心なだけだ。俺以外がどうなろうと構わないし、世界征服なんて何でそんな面倒くさいことをしないといけないんだ」

「えーつまんないですね。別にいいじゃないですか、まぁ破壊する文明や支配する歴史なんかは全部徴収されちゃって無くなっちゃいましたけど。あぁ、でも無くなったところでボッチの御主人様にはあまり関係ないですよね。一人寂しく何もない世界で暇つぶしでもしますか? 御主人様御用達の暇つぶしで使われてたエッッなデータは全部吹き飛んでるんで妄想でどうにか頑張ってもらわないといけませんけど」

「はぁーーーー!! ちょっと待て、俺のトップシークレットをなぜ知って………へっ?」

 いやまて、この部屋は俺しかいないはず。部屋どころか家には俺しかいない。

 だったら、この声は誰だ。

 薄暗い部屋を見渡すが声の主らしき人影は見当たらない。

「あ、ようやく気づいてもらえましたか?」

 のほほ〜とした若干イラっとくる声が聞こえるが声の主は見当たらない。

「何処だ、不法侵入者。警察に引き渡してやる」

 近くの交番はここから徒歩10分ちょっと、動けなくしたあとで引きずって行ってやる。

「いやですね〜。今更治安維持なんて出来てるわけないじゃないですか。残ってたとしても最早機能できてませんよ、そんな事より私はここですよ、こ〜こ、右腕を見てみてくださいよ」

 言われるがまま自分の右腕を見ると、声が聞こえる度にブレスレットの光が点滅していた。

 腕を顔の前に持ってくると先程と同じく、ブレスレットからホログラムっぽい何かが投影され、そこには先程とは違い、アニメ風の可愛らしいデザインの羽の生えたキャラクターが立体のホログラムとして映し出された。

「始めまして。私はあなたの道先案内人の名無しです。あぁ、名無しが名前では無く、本当に名前が無いんですよ。ですけど、固有名称が無いのは不便なので当面の仮名ってとこですかね。できれば名付けてもらっていいですか?」

「じゃぁ、ナナシで」 

「うわぁ……女の子の名前をそんな雑に決めないでもらいたいんですけど。そんなんだから就職先の女の子に振られるんでよ。あ、出来ればブレスレットの羽根みたいなのに触ってもらってもいいですか?」

「余計なお世話だ!」

 早口でまくし立ててきたナナシにイラッとしながら、ブレスレットの一部にある巧妙な翼の細工に触れてみる。

 すると、ホログラムが消え、ブレスレットが一際大きく光るとそのまま光は先程のナナシの形へと変化し、光が晴れたときには、実体を得たナナシが宙に浮いていた。

「ん〜っと、いや〜やっぱり実体があるのと無いのでは全然違いますね! ない時には感じられない五感を刺激するこの感覚……くっさ! 臭い、とっても臭いです! なんですかこの部屋! 換気しましょう換気。空気も重いです! なんかこう体に悪い感じで!」

 騒々しいナナシに急かされ、換気のため窓を開けようとカーテンを払い除ける。

 陽の光に目を焼かれながら日の明るさに目が慣れると、今日初めて外の様子を見た。

 カーテンを開け本来の目的も忘れて外の様子に唖然とした。

 何時もの変わり映えのしない景色。窓から見た街の景色は、所々から黒煙が立ち上がり、燃え盛る住宅。

 国道付近は今も爆発音が鳴り響き、そのたびに黒煙が立ち上がる。

「なんだよ……これ」

 慌てて窓を開くが、ここまでひどい有様なのに、サイレンの音どころか避難勧告の放送すら聞こえてこない。

 いくら何でもおかしい。

「まぁ、いきなり精密機器が壊れたらこうなりますよね〜」

 のんきの笑うナナシ。その姿には一切悪びれる様子は無い。

「何を……言ってるんだ」

「簡単なことでしょう、文明が徴収されたんですよ? その文明から創り出されたものは一切合切がその機能を停止してます。あなた方の乗り物もその文明から作り出されたものでしょう……それがいきなり制御不能になれば、ほら上を見てくださいよ」

 ナナシに言われるがまま空を見ると、巨大な旅客機が降下してくるのが見える。

「なっ……」

 旅客機はそのまま町中に墜落すると暫くして盛大な爆発音とともに火の手が上がる。

「あ〜あ、乗ってた方は運が無かったですね。まぁ、もしかしたら『指標』の力で数人生き残ってるかも知れませんが、気にするほどでも無いですよ。だって、この世は不平等で理不尽の連続なのですから」

 カラカラと笑うナナシ。

 一体今の事故で何百人の人が亡くなっただろうか、旅客機内に数十人、市街地に数百人は居た筈だ。

 だと言うのにだ、それを見て楽しそうに笑うこの妖精に自分の体から血の気が引いていくのがわかる。

「あら? 人に興味がないと言う割には、随分と顔色が悪いですね。もしかして、可愛そうだとか思ってませんか?」

 人が死んだ。いくら他人に興味がないと言っても人間性を捨てた覚えは無いし、悲惨な目に合えば可哀想だということぐらいの感情は湧く。

 目の前を飛び回る、見た目とは真逆のこの生き物はきっとその事すら知った上でこちらを嘲笑っているんだろう。

 睨みつける俺を見て、ナナシは更に笑う。

「ふふっ、いいですねその目、内から湧き出るその力強さ。何より、先程とはまるで違う意思の強さ。ふふっ、良いですね。楽しいですね御主人様。……まぁでも、気に入りましたよ御主人様。これからこの世界で生きるのなら、あの程度の犠牲で喚き散らしてる様では精神が持ちません。なにより、あなたはこの世界に数少ない魔王なんですから。生き残る為には人を、いえ、かつての同胞出会った者たちを数え切れないほど殺さなくてはならない定めなんですから」

 妖しく唇を歪めながら、窓際へ着地したナナシは、突如雰囲気が変わると、大振りな仕草で宣言した。

「ようこそ、我が子達よ新たな世界へ。文明が、歴史が、全てが消えたこの世界。今ここから、この瞬間から、世界は新たな歴史の幕を開けました。その新たな歴史へ、己が軌跡を、生き様を、伝説を新たに刻み込み、命の輝きを我々に見せるのです」

 高く澄んだその声は、世界中の生きる者たちへと語り掛ける。

 その声にある者は笑い、ある者は夢ではないと泣き崩れ、またある者は企みを企てる。

 宣言を終えたナナシは、糸が切れたかのように倒れ込み、すぐに目を覚ますとキョトンとしながら不思議そうに当たりを見渡した。

「今のは一体……」

 困惑しながらも現実だと先程から本能が告げる。認めたく無いが認めないといけない。なら、行動に移すべきだ。

 文明が崩壊した世界……生き抜くためにはこの世界を知らないといけない。

 このナナシは道先案内人と自分をそう評した、ならこの世界について知ってる事は早めに聞いておくべきだ。

 再び顔の周りを飛び回るナナシを無造作に捕まえると、向き合うように顔の前へ持ってくる。

「お前の知ってる事を話せ、道先案内人」

 生きるんだこの世界で、何もわからないままでなんていられない。時間は有限だ。

 覚悟を決めた俺に、ナナシは笑う

「えぇ、えぇ、良いですとも御主人様。貴方が一体どんな魔王になるのか一番近くで見させてもらいますよ。ぜひ私を飽きさせないでくださいね……御主人様」

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