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黎明のスラピュータ ~スマホもPCもなし?そんなの絶対楽しくないので、異世界幼女のおやつ係は「スライムなインターネット構築計画」を始動することにしました  作者: 鳴海なのか
第4章 市場調査と販路開拓

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第31話「冒険者ギルドへの、プレゼンテーション(1)」


 “冒険者ギルドに協力を取り付ける” という目標ができてから、改めて当面のプロジェクトの方向性を調整。


 座談会依頼(クエスト)も追加して、合計20組の冒険者パーティの話を聞くことができた。大半の冒険者がスラピュータに好意的で、「発売されたら買うよ!」と言ってくれる人も多くてうれしかった!

 もちろん中にはスラピュータを見て眉をひそめる冒険者もいたけど……まぁ万人に受け入れられる物ってなかなか存在しないよね。





 それと並行し、私とスライとヴィッテで手分けして、冒険者ギルドへのプレゼン準備を進めていく。




■準備1、冒険者向けサービスやサイトの構築


 現段階で提案予定のWebサービスのうち、既に大枠を構築済みな『冒険者向けポータルサイト/SNS/チャットツール/情報提供サイト』は、ひとまず微調整だけ行った。


 さらに今回は新たに『冒険者ギルドオンラインサービス』のプロトタイプを作ることに。

 こちらはギルドへのプレゼン資料として「現在ギルドで冒険者向けに提供しているサービスを、オンラインで完結するとこんな感じだよ~」って見せるサンプルにもなる予定。



 主な担当は私とスライ2号。私の個人用スラピュータに常駐するスライムも2号で、日頃から色々とサポートしてくれてるんだ!


 私がこれまで会社で担当した案件や、利用していた様々なサービスを思い出しつつ、現在の冒険者ギルド提供サービスをWeb上で完結できる導線を構築。

 あとは2号に伝えて画面に表示してもらう形で、サービス提供サイトを骨組みから組み立てていった。




■準備2、冒険者向けコンテンツの作成


 冒険者向け情報提供サイトの掲載コンテンツとしては、大量の文章を用意した。

 主な担当は、スライと、数十体のスライ分裂体たち。


 座談会で冒険者から聞いた「こういう情報を手軽に調べたい」っていう要望をもとに、各掲載記事のテーマをスライが決定。

 そのテーマをもとに、スライ分裂体たちが個別記事の作成を担当。こっそり街中へ繰り出して執筆に必要な情報を調べるのも各分裂体の仕事だ。



 分裂体が書く記事は、スライ特有の難しい言葉遣いもあって、最初とても読みづらかったんだよね。


 そこで私がWebライティング――Webサイトに掲載する文章を書くテクニック――の基礎を伝授。例えば、1文は短く、言葉はやさしく、目次/見出し/箇条書きを追加する、等。

 何回か添削を繰り返すうち、分裂体たちも割と読みやすい記事を書けるようになった!



 執筆場所は、我が家の2階寝室の床。

 狭い民家の部屋を埋め尽くす大量のスライムが次から次に執筆、つまり体へ文字を表示していく様子はとても圧巻だった。


 というか分裂体は全員スライの一部だから、実質動いてるのは全部スライなわけで……。


 ……1体で膨大な記事執筆も取材も、ディレクションはじめ関連作業もこなしまくるとか、ちょいとオーバースペック過ぎませんかね??




■準備3、プレゼン用資料の作成


 Webサイトとあわせて、冒険者ギルドへスラピュータをプレゼンするための資料も、丁寧に作りこんでいくことにした。


 主な担当は私とヴィッテ。

 私が大まかにラフ原稿を作り、それをヴィッテが清書する形だ。



 本当は私が1人で資料作りも担当する予定だったけど、ヴィッテが「あたしも なにか やるわっ!」と騒ぎ出しちゃって……。


 困った私は、試しにラフ数枚を渡し「これを見やすく綺麗に描き直してくれるかな?」とお願いしてみた。ヴィッテは暇さえあれば楽しそうに絵を描いてたから、とりあえずそれっぽいことを任せてればおとなしくなるかなぁと。



 2時間後。完成した資料は想定以上のクオリティだった。


 色使い、文字の大きさや太さ、余白の配置、説明を補足するイラスト。どれをとっても文句の付けようがない、まるでベテランデザイナーが仕上げたようなシンプルデザイン。

 一目で情報が伝わる分かりやすさに加え、手描きならではの味で説得力が増している……プレゼン資料としての完成度、ものすごく高いぞッ!


 ということで正式に、ヴィッテに資料の清書をお願いすることに決めたんだ。



 そういえば試作品作りの時、ヴィッテがデザインしたバッグ型スラピュータのイメージイラストもよくできてたもんなぁ……。



 ……ヴィッテには案外、デザイナーとしての才能があるのかもしれない。





*************************************





 プレゼン準備は1ヶ月ほどで完了。

 作業がひと段落した夜、食卓横の壁掛けカレンダーが目に入った。


「いよいよ明日は冒険者ギルドに行く日だな……」


 今日の日付に『×』を付けながら、ふとつぶやく。




・・・・・・・・・・

>マキリの不調を確認。

>過度な呼吸、声の震え、体温の上昇……。

>以上の状況から推測するに、緊張中ですか?

・・・・・・・・・・


 目ざとく寄ってきたスライには、「まぁね」と溜息混じりに答えておく。


 Web掲載用の分かりやすく柔らかい文章を作れるようになったスライだけど、普段の言葉遣いは相変わらず回りくどくて硬い。

 本人いわく、普段はこの口調のほうが楽に言葉を紡げるんだって。




緊張(きんちょー)なんか 必要(ひつよー)ないわよ! せっかく いいものを つくったんだから、マキリは もっと 堂々(どーどー)と しなさいっ」


 横から明るく放ったのは、かわいいパジャマに着替えたヴィッテ。

 いつもの添い寝用ぬいぐるみも抱えているあたり、寝る準備は万端みたい。


 なんだかんだ “いいもの” って言ってくれるのはすごくうれしい。

 あとは、私がうまくプレゼンできればいいんだけど……。




・・・・・・・・・・

>質問です。

>緊張の契機は何でしたか?

・・・・・・・・・・


「え、緊張のきっかけ? ……まぁなんたって()()()()()()()()()()()()だから、かな」


 もし失敗したら、今まで頑張ってきたものが音を立てて崩れてしまう。

 というか先方にはまだ何も伝えてないわけだから、実際にプレゼンさせてくれるかどうかすら確定していない。

 冒険者ギルドの協力を得られないとなると、“冒険者向け” という方針自体見直さなきゃいけないかもしれないし……。


「私、こういう売り込みってあんまり経験無くてさ。『失敗したら』って思うと、ちょっと震えてきちゃうんだ」


 私の専門はあくまでサイト構築。社外への売り込みは専門外だ。

 本番で慌てず説明できるよう、実際のプレゼンを想定したリハーサルも入念に行ったとはいえ、正直あまり自信は無い。



・・・・・・・・・・

>時として、失敗への危惧は成功を誘導します。

>危惧を元に様々な事態を想定する事で、事前に対策する事も可能になるためです。

>ですが過度な危惧が過度な緊張を誘導した場合、集中力を低下させ、能力の発揮を困難とします。

>私の知る限り、過度な緊張による利点は存在しません。

>即座に過度な緊張を停止すべきです。

・・・・・・・・・・


「“停止すべき” って……簡単に止められるもんなら、苦労しないよ?」


 私だって緊張し過ぎが良くないことぐらい分かってる。

 別に緊張したくて緊張してるわけじゃないし……。


「……でも『明日は私1人で冒険者ギルドへ売り込みに行くんだ』って考えると、なんだか責任重大というか……気が重くなってきちゃって――」



「あら、マキリは1人じゃないわよ!」


 笑顔で私の言葉をさえぎるヴィッテ。

 明日ギルドに行くのは私1人のつもりだったんだけど――。


「まッ! まさかヴィッテちゃん、付いてくるつもり⁈」

「ちがうわよ。だって マキリには あたしが かいてあげた “ぷれぜん資料(しりょー)” が ついてるもの。それに スラピュータを 見せるだけでも “いいもの” ってわかるはずだし、スラピュータの なかには 2(ごー)も いるでしょ? だからマキリは1人じゃないわ」


「ヴィッテちゃん……」




 一生懸命ヴィッテが描いてくれた資料。

 手間暇かけてスライが仕上げてくれたコンテンツ。

 皆で作り上げてきたスラピュータやサービスサイト。

 それにスラピュータに隠れて付いてきてくれる2号もいる。

 

 ……ヴィッテの言う通りだ。

 明日の私は1人じゃない。




・・・・・・・・・・

>加えて補足すると、仮に明日マキリが失敗したとしても、計画(プロジェクト)に何ら影響はありません。

・・・・・・・・・・


「え……どういうこと?」


・・・・・・・・・・

>何故なら、エイバスの冒険者ギルドへの売り込み(プレゼンテーション)は、我々の計画(プロジェクト)の最終目的とは異なるからです。

>我々の最終目的は、スラピュータによるインターネット普及、そしてヴィテッロ様のためのおやつ係と新居捜索にあります。

>よって仮に失敗したとしても問題ありません。計画の方向性を調整すれば済むだけの事。私の優れた頭脳をもってすれば、状況に適応した計画考案など容易なのですから……。

>……決行前日段階において、今更マキリが失敗を危惧する必要性は存在しません。

・・・・・・・・・・


「スライ……」




 やけに自信たっぷりなスライの言葉。


 だけど私は知っている。

 スライの発想力がものすごいことを。

 これまで色々あった割になんだかんだ何とかなってきたのも、スライの提案のおかげによるところがとても大きい。


 だからこそ、()()()()には不思議な安心感があったのだ。




()()()()()()()()()、か……その発想はなかったな」


 私がぽつりと口に出すと、スライが補足を入れてきた。


・・・・・・・・・・

>勿論マキリが成功するに越した事はありません。

・・・・・・・・・・


「へ? さっきと言ってること違うんだけど?」


・・・・・・・・・・

>いえ、両立し得る内容です。

>正確には、失敗しても問題ありませんが、成功すればなお良いという事。

>マキリがギルドとの協力成立を達成すれば、現方針のまま計画(プロジェクト)を続行可能な事から、事態も滞る事なく進行可能となる確率が高いでしょう。

>ですが失敗すれば方針転換を余儀なくされることから、多少時間と手間を追加する必要があるでしょう。

・・・・・・・・・・


「あ~……そりゃまぁ確かに、成功するに越したことはないよね」



・・・・・・・・・・

>では就寝前に、最後の売り込み(プレゼンテーション)練習実行を提案します。

・・・・・・・・・・


 スライが提案するや否や、「だったら あたしも てつだうわ!」と元気に手を挙げるヴィッテ。


「ヴィッテちゃんは寝る時間なんだけどなぁ」

「ねぇ ちょっとだけ! ちょっとだけなら いいでしょ?」

「……そうだね。じゃあせっかくだし手伝ってもらおうかな」

「やったー♪」


 ヴィッテはまぶしい笑顔で飛び跳ねたのだった。


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