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黎明のスラピュータ ~スマホもPCもなし?そんなの絶対楽しくないので、異世界幼女のおやつ係は「スライムなインターネット構築計画」を始動することにしました  作者: 鳴海なのか
第4章 市場調査と販路開拓

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第24話「現状整理と、当面のインターネット構築戦略(2)」


 魔導具スラピュータが完成し、最初のターゲットも “エイバスの冒険者” と決定。このタイミングで1度、当面のネット構築戦略を調整しておくことになった。



 ちなみに計画をスムーズに進めるために、『Webサイト』はじめ “インターネット関連の基本” となる用語やシステムは、既にひと通り説明済。


 なんとスライは私の説明を片っ端から理解し、率先して一段階上の話をしていた。初めて出会う異世界知識をこれだけ自分のものにして扱えるなんて……ほんとたいしたもんだよ!


 ヴィッテはというと、ざっくり何となくは理解してくれたみたい。

 まだ幼いことを考えたら十分過ぎるぐらいだし、あとは随時フォローすればいい。






 さっきまとめたばかりの資料――スラピュータの機能、冒険者やエイバスの街に関する情報など――を眺めつつ、我が家1階の食卓を3人で囲む。


「さぁ スライ、マキリ! さっさと 調整(ちょーせい)するわよッ!!!」


 先程までとは打って変わってヴィッテが妙に燃えている。

 どうやら、やる気が爆発したっぽい。


・・・・・・・・・・

>改めて確認します。

>スラピュータ計画(プロジェクト)は、当面『エイバスを拠点として活動する冒険者達へのインターネット普及』を目的とし稼働する事が決定しました。

>只今より、目的達成までの戦略に関する意見交換と、その内容をふまえての戦略調整を予定しています。

>戦略調整の方向としては、現在の『“一般的なヒト” 向けの戦略』を、目的に合わせ『“エイバスを拠点とする冒険者” 向けに特化した戦略』へ更新する形を想定。

>複数名での意見交換による、個々での思案時とは異なる刺激や連鎖の発生を期待しています。

・・・・・・・・・・


「ねぇ、『冒険者(ぼーけんしゃ)むけに とっか』って なに??」


 ヴィッテが首をかしげる。


「簡単にいうと、“冒険者の人に『欲しい!』と思ってもらいやすい売り方をしよう” 、そのかわり “冒険者以外の人には売れなくてもいいや” って割り切ることだよ」

「なんで? 文字が よめるヒトは 冒険者(ぼーけんしゃ)だけじゃないのに……せっかくなら いっぱい いっぱい いろんなヒトに 売ったほうが いいわよね? そのほうが はやく インターネットが ひろまるはずだわっ!」

「う~ん、それができたら話は早いんだけど、なかなかそうはうまくいかないんだよね」

「なんで???」

「そうだなぁ…………例えば、うちの近くにお菓子のお店ができるとするよ――」


「おかしの おみせっ!!!」


 食い気味に目を輝かせるヴィッテ。



 “例えば” だけどね。

 ほんとにできるわけじゃないよ……?




 ……とりあえず話を続けよう。




「その、仮にお菓子のお店ができるとして、もし並んでるお菓子が “全部ミント味” だったとしたらどうかな?」

「うェ……そんなの ぜんぜん うれしくないわ……」


 ヴィッテが露骨に顔を(ゆが)めた。


 君、ミント苦手だもんねぇ。

 それなのにこの間、私のミントキャンディ――ヴィッテに内緒でこっそり口直しに食べようと思ってキッチンに隠してたやつ――を勝手に食べて大騒ぎしてたの、よ~く覚えてるよ。



「ヴィッテはそうかもだけど……私はうれしいなぁ」

「えっ なんで⁈」

「だって私、ミント味とかのハーブ系のお菓子やお茶も割と好きだもの。だからもしミント菓子(スイーツ)専門店が近くにあったら、時々ふっと通いたくなっちゃうと思うな。もしかしたら珍しいお菓子に出会えるかもしれないし……『冒険者向けに特化する』ってのも似たような感じだよ」


「み、ミントあじの おやつを つくるの?」

「なんでそうなるッ!! そうじゃなくてね――」


 この世の終わりみたいに青ざめるヴィッテ。

 誤解を解こうとした私をさえぎるように、すすっと割って入ったのはスライ。



・・・・・・・・・・

>ヴィテッロ様、解釈が異なります。

>マキリは “概念” を解説すべく例を挙げたのみであり、実際にミント菓子を製造するわけではありません。安心してください。

・・・・・・・・・・


「そ……そーなの?」


「そうだよ。ミントはあくまで “た と え ば” の話だから!」

「よかったァ……」




 ヴィッテが落ち着いたところで、改めて説明を再開する。


「私が言いたかったのはね。例えばお菓子屋さんなら、普通はバタークッキーやフルーツタルトみたいな “人気のお菓子” を売ることが多いけど……状況によっては、あえてミント味のお菓子みたいに “好きな人が限られるお菓子” だけの専門店にするってのが正解な場合が少なくないんだ」

「どーして?」

「へ⁈ ええっと……」


 ずっと『()()()()()()()』って思って働いてきた部分だから、どうしてと聞かれてもなぁ……。





 ……ふと、Web制作会社で働いてた日々を思い出す。


 私は営業職じゃなかったから、直接何かを売り込むってのは専門外。

 だけど間接的には色んな商品を売り込みまくってきた。

 関わった案件は企業ホームページやネットショップなど『物やサービスの販売が目的なサイト制作』が大半だったから。



 ――『何』を『誰』に『どうやって』売るか。


 ()()()()()()()()は、この1点に集約されてたと思う。

 さらに噛み砕くとこんな感じだ。


 ――『商品』の価値を隅々まで把握して

 ――見定めた『ターゲット』を狙い撃つよう

 ――的確に『心を動かし、つかむ見え方』で売り込む。



 そして私自身も、経験を積めば積むほど、この考え方の有用性をひしひし実感するようになったんだよねぇ……。





「……というわけで何かを売りたいなら、まずは価値を認めてくれる相手を捜して、その相手に知ってもらって、『これ欲しい!』って思わせなきゃ始まらないんだ……で、限られた商品だけを扱って、他にない魅力をガガッと打ち出すと、『絶対にこのサービスがいい!』って言ってくれる熱心(コア)なファンをつかみやすくなるみたいなんだよね!」


 入社直後に聞いた気がする先輩の説明を思い出しつつ何とか説明を終えると。

 相槌を打ちつつおとなしく聞いていたヴィッテが、難しい表情のままスライのほうを向いた。


「ね、スライは どうおもう?」


・・・・・・・・・・

>この点に関しては、私もマキリと近い考えを所持しています。

>過去の多くの事例を見るに、『“対象(ターゲット)を絞らない商売” は、成約率や効率が悪くなる』という傾向にあります。

>特に認知度が低い新規参入者は、既存事業者に比べ圧倒的に不利です。

対象(ターゲット)を絞り的確に狙う事により、最低限の負担での利益増大を期待しやすくなるでしょう。

・・・・・・・・・・


「なっとくは できてないけど……スライが そういうなら、なっとくしてあげるわ!」


 ヴィッテはようやく晴れやかな顔に戻ったのだった。





・・・・・・・・・・

>話題を戻しましょう。

>インターネット普及戦略を『エイバスの冒険者向けに特化』するにあたり、マキリはどのような手法が有効だと考えますか?

・・・・・・・・・・


「とにかく冒険者向けのWebサービスやコンテンツの充実を図らなきゃだよね。今はまだ、一般向けのWebサイトとかチャットツールの枠組みぐらいしかできてないでしょ」

「ねぇ それって『冒険者(ぼーけんしゃ)の ための サイト』や『冒険者(ぼーけんしゃ)の ための チャット』を つくるってこと?」

「そうだよ! で、そういう特化サービスを作ったあとは、スラピュータに “サービス一覧機能” を追加して、一覧から色んなサービスに飛べる形が定番かな」


・・・・・・・・・・

>以前聞いた『ポータルサイト』という概念でしょうか?

・・・・・・・・・・


「それもあり。その場合はポータルサイトも冒険者向けのに特化した『冒険者ポータル』みたいな感じにするといいかも! もしくはスマホのホーム画面みたいに『好きなアプリ(サービス)を並べて確認できる』タイプの一覧にするかのどっちかだと思う」


・・・・・・・・・・

>成る程。

>自由に並べ替えが可能な仕様にすることで、自然と各使用者ごとに特化された状況を生み出すという事ですか。

・・・・・・・・・・


「まぁあんまり自由度を上げ過ぎちゃうと逆に困る人も多いだろうし、ある程度のテンプレートは必要だけどね……ただ具体的にどうするかは、エイバスの冒険者のニーズをもうちょっと詳しく調べてから決めたほうが無難だと思う」


・・・・・・・・・・

>同意。市場調査および反映を適切に実行することにより、計画(プロジェクト)の成功率は上昇すると考えられます。

>冒険者達への聞き取り調査は、マキリが実行担当という事で良いですか?

・・・・・・・・・・


「リサーチかぁ……」


 そりゃまぁ残りのメンバーが魔物(スライ)幼女(ヴィッテ)な以上、消去法としてはそうなるよね。


「……専門外だけどがんばってみるよ。あ、となるとリサーチ準備も進めなきゃだな」





 意見を出せば出すほど決めるべきことも増えていく。

 勢いに乗った私たちは、その日のうちに大まかな計画の調整を終えたのだった。


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