3話
ガチャという1大イベントを終えた俺が何をしているのかと言うと、床に寝転がりダラダラしていた。ひんやりと冷えた床サイコー!!!
え?働かないのかって?いや、単純にやることがないんだよ。ダンジョンの唯一の戦力の供給源リポップ罠でゾンビが増えていくのを待つしかないからな、もうDPないし。
「ご主人様、紅茶でございます」
「ああ、ありがとう」
ダラダラ過ごしているとお盆に紅茶の入れたカップを持ってアリシアが近づいてきた。あれからアリシアともすぐに仲良くなり、今では紅茶を注いでくれるまで俺に忠誠を誓ってくれていることが分かった。
「………うめぇー!!」
しかもこの紅茶美味いのなんのって、最初に舌に触れた際の液体の温度が人間の常温である30後半くらいの温度に調整されており、喉の通り心地は滑らかで飲みこむのも一切のしんどさを感じさせない。こんなの日本にいた時でも飲まなかったぞ、多分。
「お褒めに預かり光栄でございます」
と言うと彼女は一礼をし、お盆をスカートの内側へとしまった。うん?スカートに?あんな大きな面積をしまう場所なんてないぞ??
「メイドの嗜みにございます」
驚いた様子が顔にでも出ていたのだろうか、彼女はまた軽やかに一礼をして傍によってきた。うん、これは触れたら負けな感じのアレだ、気にしないでおこう。
と、彼女のスカートの中身を考えるのを諦めていた時、俺のスマホからけたたましい音のアラームが鳴った。何事かとスマホを見ると、
[緊急事態発生、ダンジョンに初めての侵入者が現れました]
と、画面に大きく表示され、スクリーンのようにダンジョン内の状況を記した監視カメラのような映像が表示された。
「なんだコイツら」
ダンジョンに初めて踏み込んできた侵入者、どこぞかの騎士団か冒険者かと思っているとそのどちらの風貌にも叶わない頭にバンダナを巻いて、服はボロボロの20人程度の男たちが群れを成して歩いていた。
「恐らく…盗賊かと」
アリシアは俺の疑問に素早く答えてくれた。全く、記念すべき1人目の侵入者が盗賊とか、幸運といえばいいのか…不運だといえばいいのか………
「まぁ、折角の記念すべき第一回目の侵入者なんだ、歓迎をしなければいけないよなぁ」
「かしこまりました、では事前に計画した通りに。」
アリシアはそう言って姿を消した。計画の準備をしにダンジョン内に侵入したのだ。
「さて、俺の策がどこまで通じるか、楽しみだな」
俺はわざとらしくにやりと笑みを浮かべた。
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「頭、おかしいですぜ!道がどこまでも続いてやがる!」
「分かってる!だからでけぇ声で叫ぶな馬鹿野郎!」
俺はちょっとは名の知れた盗賊団の団長をしているゼンだ。昔は騎士なんて真似事してたが、馬鹿やってたら追放されちまった。今日も馬車を襲い、場所の中にあった金目のものを全てぶんどっていた。しかし、襲った商人は国と何らかの繋がりがあったのか、騎士団呼び出し用の魔法具を持っていやがった。お陰様で騎士団の大群に襲われて命からがらこの洞窟に逃げ込んだって訳だ。なんでこの俺様がこんな目に遭わなきゃいけねぇんだよ、全く。
しかし、判断を間違えただろうか。この洞窟、延々と道が続いていやがる、もしかするとこりゃ………
「……ん?てめぇら止まれ!」
俺は恫喝で部下を全員その場に止めた、にもかかわらず奥からザッザッと足音がする。
「おい!剣をぬけ!」
ジャリリリンと金属音を立てて俺達は戦闘体制に入った。奥から出てきたのは………
「ありゃ……ゾンビか?」
奥から骨に肉が着いているだけのような生物がザッザッとゆっくり近づいていた。
「ふん!」
俺は1歩踏み出し力強くゾンビの首を吹っ飛ばした。
すると目を疑うような現象が起こった。瞬く間にゾンビの動きが止まり、床に倒れたかと思うと消滅していったのだ。
「ま、魔物が消えた?なんだこりゃ!」
部下たちは今の現象を信じられないようで目を何度も瞬かせている。
「いや、俺が騎士やってた時に1度だけ聞いたことがある」
「「え?」」
全員の視線が頭目である俺に集まる。
「魔物を倒した時消滅すんのはある場所だけ、それは…ダンジョンだ」
「ダンジョンですって!?あの!?」
ダンジョンといえば世界を滅ぼすために邪神が魔素を喰らい尽くす魔物を生み出すための場所だ。そんなところに自分たちがいるという実感が彼らにはなかった。
「だが、好都合だ。外はもう騎士団の連中が俺たちを探し回ってんだろ、俺達はこのダンジョンを攻略してここをアジトにすんぞ!」
「「分かりやした!」」
部下たちは意気込みを入れて奥へと進んでいく。全く、馬鹿で扱いやすいやつらだな。
「ククク、もし俺の手に余るやつが出てきたら速攻で見捨てて逃げるがな」
笑いを堪えられないといった感じで奥に進んでいくゼン。しかし、彼の最良の判断はすぐにこのダンジョンから出ることであった。彼は判断を間違え、奥へ進むことを決めた、それが彼の命運を決める選択とは知らずに。