2話
とりあえず無料でゾンビリポップを移動させれるみたいなので入口付近に移動させてみた。しかし、ダンジョン内で生まれた魔物はダンジョンを出ることが出来ないのでダンジョン内をさまよい、やがては1番奥の部屋、すなわち俺のいる所まで来るのは目に見えている。
そのため早急に対策が必要だろう。そして、思いついたのはボス部屋。
ボス部屋を作るとその部屋には巨大な扉が出現し、中に入るのは人類しかできないそうだ。つまり、ゾンビの連中はここには入って来れない。
これだ!と思い俺はすぐにシステム画面をタップする。
[誰をボスに登録しますか]
「……あ」
………そうか、馬鹿か俺は。
ボス部屋と言うんだからその中にはボスが居るはずだろう。しかし今の俺の手持ちには何の魔物も居ない。DPも尽きている。かと言って俺を一階層のボスに登録する訳には行かない。さて………どうしたもんか。
「………まてよ、そういえばさっきガチャチケットとかいう物を貰ったよな……」
俺は持ち物の欄をタップした。そこにはちゃんと魔物創造チケットが2枚、そして、ランダムスキルガチャチケットなる物が保管されていた。
「魔物創造………」
俺は一縷の望みにかけて魔物創造チケットを選択した。
[魔物創造ガチャを行います。よろしいですか?]
という画面が表示されたので俺は迷わずにYESを選択した。
すると目の前に魔法陣が現れまやぶい光を放つ。
「カタカタカタカタカタカタカタ」
骨に雑に肉が貼られたような外見をした魔物ががそこには居た。少しグロくて吐いてしまいそうだ……。とりあえず鑑定を使用する。
ランクD
グール
長年生きたゾンビが知能を得た姿、ゾンビとは一線を超えた強さを誇る
おお?なかなか良い奴が出てきたんじゃないか?ランクがまだまだ低いのはしょうがないが、もっと高いものも出てきて欲しいな。
さて、もう1枚のチケットも使ってしまうか。
先程と同じ流れで魔法陣が光った。しかし今回は虹色の光を放って魔物は顕現した。
「お呼び頂けまして光栄にございます、ご主人様」
「………えぇ?」
出てきたのはメイド服を見事に着こなしたお姉さん。姿勢が綺麗であり、真っ赤な髪を肩まで伸ばし、緋色の目をランランと輝かせた見た目は人間のような魔物であった。しかし、この人物を鑑定してみると。
ランクA
個体名「・・・・・」
種族 吸血王
吸血種の上位者。
とある吸血王は一国を滅ぼす程の力を有したと言われている。
また、知能もただの人を超越しており、戦略にも長けている。
キング?キングって言いますとあの………王様のことですか!?しかもランクA!?まさかこんなレアな魔物が当たるとは………
「これからよろしくお願いします……ご主人様」
「あ…ああ、こ…こちらこそよろしくお願いします」
丁寧に挨拶をされたことで俺の社畜精神が働き、営業で培ったスマイル自己紹介のスキルを披露してしまった。さ、さすがAランクの魔物………俺のハートを一瞬で鷲掴みにしたな……。しかし、こんだけ強いのだ、反逆の可能性を考えなくてはいけないのだろうか?
「生み出していただいた創造主に逆らうなど、とんでもございません」
と、勢いよく反論してきた。……どれくらい信じれるのかは分からないけど、とりあえず今のところは信じるしかなさそうね。反逆されても抑える力ないし。
「君…名前は?」
「名前はありません、貴方様につけていただけると………その……嬉しいです…」
クールな外見の彼女は思いもつかないセリフがでてきた。彼女も恥ずかしいのか少し体をもじもじと、よじらせている。
「…俺なんかがつけていいのか?」
「あなたにだからこそつけてもらいたいのです。」
ふーむ、と言ってもそんなすぐにいい名前など浮かばないし、こんな美少女の名前を決めるなんて俺の荷には重いのだが。そういえば…前世では推してるアイドルがいたな、名前は………
「アリシア、君の名前はアリシアだ。」
「アリ…シア…?」
「ああ、俺の前世で推してたアイドルの名前だ。」
「……ッ!」
そう言うと彼女は視線を下に落とし顔を伏せた、もしかしてなにか気に食わなかったのだろうか。
「アリシア……いい名前ですね。」
「…喜んでくれたようでよかったよ」
言葉はいつも通りクールな口調であったが顔から彼女が喜んでいる感情が読み取れた。彼女の綺麗な顔に見とれながら、気に入ってくれたようで良かったと思った。最後のセリフを言った時に、にへらにへらとした表情をしていないかだけが心配である。
さて、それじゃあ他に貰ったチケットのガチャもしてしまうか。確かスキルガチャとアイテムガチャが残ってたな?なら、先にスキルガチャを済ませてしまうとしよう。
固有スキル
鑑定の魔眼
見る対象を選ぶとその人物の詳細なステータスを除くことが出来る。人外専用スキル。
ほうほう、これはなかなかいいスキルなのでは?見慣れた異世界テンプレのスキル、しかしこのスキルが有用なのは一目瞭然。有難くこの力を利用して生き残ってやる。
続くはアイテムガチャだが?
「ん………これって?」
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私は名も無きダンジョンマスターに創造された吸血鬼。これでもランクは上の方で王と呼ばれている。
「アリシア……君の名前はアリシアだ」
「アリ…シア…?」
そしてご主人様に着けてもらった名前は…アリシア。ご主人様が前世で推していたアイドルの名前だそうだ。
「………ッ!」
私はこの名前をすぐに気に入り顔がほぐれてしまいそうだったので顔を伏せた。するとご主人様が不安そうにこっちを見ていたので慌てて顔を上げて普段通りの言葉遣いで感謝の意を伝えると、どうやら私の顔が破顔していたようでご主人様は優しく微笑んでいた。
「…喜んでくれたようでよかった」
「…ッ!」
ドクン
その表情の穏やかさに私はドキリとしてしまった、ドクンドクンと胸の鼓動が早い。どうしても胸の鼓動を抑えることが出来ない、そう……私はご主人様のことが…………
こんなにも可愛い名前をつけてくれた優しい私の創造主のご主人様。私はこの人の為に命を尽くして仕えよう、そう決めた。そして、ご主人様には気づかれないように小声で呟いた。
「私は……どんな事があってもあなたに着いていきます……」
そう、たとえどんなことがあろうとも。そして叶うならば、いつかあなたのそばに………