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46:ベテランとのダンジョン探索

 翌日から私は早速ウルたちとダンジョン探索へ出かけた。

 プロトたちとは歩きで向かったダンジョンへの道だけれど、今回はラルクもいる。町の市門を出た所で私がキャティを、ラルクがウルの手を掴んで空へ舞い上がった。


「うわぁ、高いねー!」

「キャティは怖くないの?」

「うん、平気だよ。もし落ちてもあたしは着地出来るし」

「そこは大丈夫よ、絶対落としたりしないわ」


 さすが山猫族ね。鳥と同じような高さを飛んでるのに、怖がる所か目をキラキラさせてるわ。

 対してウルは、全身でラルクにガシッとしがみついていた。


「ラルク、まだ? まだ⁉︎」

「そんな早く着くわけないだろう。もう少し落ち着け」

「ひぃ、高い! 落とさないで! 頼むから落とさないで!」

「おい、腕を緩めろ。首が絞まるだろうが! 大体、目を開ける馬鹿がいるか、瞑っておけ!」


 空を飛んで行こうと提案したのは私だけれど、ここまで怖がる姿を見ると失敗したかな、と思う。

 ウルとラルクは長い付き合いみたいだし、空に連れてってもらった事もあるんじゃないかと思っての提案だったけれど、そんな事はなかったそうなのよね。


 そもそも誰かを連れて飛翔魔法を使うという事自体、ラルクは考えた事がなかったそうだ。

 私は小さい頃にこの魔法を覚えてからというもの、お兄様たちを何度も空の散歩に誘っていたから、驚かれた事に逆にビックリしたわ。


 色々騒がしくはあったけれど、いつもは丸一日かかる道のりは空を飛んだおかげで大幅に短縮出来て、昼前にはダンジョンに着く事が出来た。

 持ってきた昼食を食べつつ、未だ興奮冷めやらないキャティを宥めて、ウルも恐怖から立ち直った所でダンジョンへ入る。


 地に足を付けたウルは、さっきまでの怯えはどこへやら。挽回しようと目をギラギラさせて魔物を探しているから、その威圧に魔物の方が尻込みしたのか、しばらくの間何とも出会わなかった。

 鼻歌でも歌いそうな気楽な足取りで私たちは下へと降り続け、ようやく魔物が顔を出したのは第八層を通過する頃だ。それもウルがさっさと倒してしまうから、私は何もする事がなかった。


「ウル、私の獲物には手出し無用だからね」


 一切寄り道せず駆け抜けた結果、私たちは半日と経たずに第十一層にたどり着いた。ここからはようやく、私が狙っている魔物が出てくる。

 今回は一気に第二十層を目指す予定だ。そして三級の特定依頼を受けれるよう、依頼達成数も一度で稼ぐ予定でいる。だから私が受けた依頼の魔物は、私一人で倒すと事前に伝えていた。


「分かってるよ。お手並み拝見させてもらうね」

「エルちゃん、頑張ってー!」


 ウルとキャティの声援を受けて、見つけた魔物を次々に倒していく。たまに横から現れる余計な相手は、二人が片手間に倒してくれるから気が楽だ。

 その間にラルクは一人で先へ行ってしまった。第十二層への降り口近辺で野宿の準備をしつつ、夕食を用意してくれるらしい。


 ここで一仕事終えれば美味しいご飯が待っていると思うと、より一層やる気が出るわね。


「エルちゃん、すごい! 強くなったね」

「安心して見ていられたよ。三級にもなれそうな勢いだ」

「本当? ありがとう」


 二級冒険者の二人に褒められると、とても嬉しい。討伐証明となる部位や回収した素材を収納魔法でしまい込み、私たちはラルクの元へ向かう。


 第十一層は止まない吹雪という過酷な環境で、私一人なら右も左も分からなくなってしまう場所だ。プロトたちと来た時ですら、出入り口を探すのにかなり苦労した。

 けれどさすがというべきか、ベテランの二人は全く迷う事なくあっさりとラルクの張ったテントへ連れて行ってくれた。

 テントの周りにはラルクが風魔法で結界を張っていてくれたみたい。吹雪のないその空間に入り込むと、辺りには美味しそうな香りが充満していた。


「いい匂いね」

「あたしお腹ペコペコだよー」

「おう、おかえり。ちょうど出来たところだぞ」

「おっ、相変わらず美味しそうだ」


 ウルとキャティごと雪で湿った体をサッと魔法で綺麗にして、みんなで焚き火を囲む。

 収納魔法を使えるラルクは、当然ながら大量の食材や薪を持参していたみたい。じんわり広がる温もりが心地よい。

 至れり尽くせりな環境に、自然と頬が緩んだ。


「エルもしっかり食べておけよ」

「もちろんよ」


 こうして四人でいると、初めて会った頃を思い出すわね。あの頃と同じように、ダンジョンに潜っている間は夜番をラルクとウルで回してくれるそうだ。

 こんなに楽をしていいのかなと思ったけれど、仲間なんだから助け合って当然だと言われてしまうと何だかくすぐったい。私ももっと強くなって、みんなに頼ってもらえるようになりたいなと改めて思う。


 そうしてみんなのおかげで気力体力共に余裕を持って進む事が出来たからか、ダンジョンに潜った翌日には、プロトたちとは行けなかった第十五層まで進む事が出来た。

 これまでなら、ここからさらに各階層を探索するのに時間を取られたけれど、今回はウルたちベテランがいるからそんな事もない。

 ウルたちは各階層の出入り口だけでなく、私が受けた依頼の魔物がどの辺りにいるのかも熟知しているから、狩場にも案内してくれた。


 おかげでその五日後には第二十層まで行けた上に、予定していた依頼も全て終わらせる事が出来た。

 そしてラルクはこの間一切戦闘に参加する事なく、終始料理と野宿の準備だけしていた。本当に戦わないとは思わず驚いたけれど、これがウルたちとラルクの常らしい。むしろ初めて会った時に共闘していた事の方が珍しかったみたい。


 まあ、どちらにせよ今回は、ラルクの出番なんてどこにもなかったけれどね。私もウルたちの力を借りず、目的の魔物は全て一人で倒し切ったもの。ウルが言ってくれたように、私はもう三級程度の実力はあったのかもしれない。

 三級の特定依頼が何なのかはまだ分からないけれど、これなら簡単にこなせるかしら。少しワクワクしながら、私は一度町へ戻った。

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