120:依頼の報酬
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別室へ移動しての報酬の話し合いは、やはりというか何というか、一筋縄ではいかなかった。アルターレでの時と同じように、クラーロ国王もラルクを手元に置いておきたいようで、クラーロに残るよう勧誘されたから。
王妃様の治療に目処は立ったし、必要な薬も充分な量を作ってラルクが渡したとはいえ、王妃様の体は弱ったままだ。今後の事を考えたら心配にもなるもの。受け入れられはしないけれど、国王の気持ちだけは理解出来るわ。
けれどラルクはそんな事も承知の上だったみたい。聞けば、王妃様との面会はラルクのごり押しで実現した事だったそうで、国王が知る前に今日突然敢行したんだそうだ。
その甲斐あって、クラーロ国王は私たちを交渉材料にする事が出来なかった。むしろ逆にラルクが「面識のあるこいつらに何かあったら、王妃はどう思うだろうな?」なんて国王を脅し始めたから驚いたわ。国王は苦笑しつつも、ラルクを諦めてくれた。
そして肝心の報酬も、王妃様の治療を手伝った事もあり、ラルクは悠々と多めに要求してもぎ取った。本当は何も関係ないウルとキャティの分も、拘束されたのだからと上乗せしてある。
その結果、お金はもちろん大陸を渡る船の手配、さらには私への指名依頼までもらう事になった。
私だって何か特別な事をしたわけじゃないのに、こんなにいいのかと思ったけれどそれは口に出さなかったわ。ラルクが有能過ぎるとはいえ、下手な事を言って足を引っ張りたくないもの。
それに指名依頼については、クラーロ国王も満更でもなさそうだった。依頼内容は、海を渡った先の国々へ書簡を届けるというものだ。ラルクと私に親書を運ばせる事で、クラーロ国にはエルフ族との繋がりがあるのだと見せる意図があるみたい。
ちなみに同じような依頼はアルターレ王家からももらっている。長命で様々な知識を持つエルフ族はどこの国でも欲しい存在なのだろうけれど、そのエルフ族は捕まらないのだから苦肉の策よね。
そうして報酬を受け取った私たちは、その日のうちに城を出た。また足止めされたりしたら面倒だもの。
城での生活は快適だったけれど、やっぱり緊張していたのだろう。賑わう街中へ出ると、思った以上の開放感に満たされた。
「ようやく出られたぁ」
「本当、疲れたよね。ラルクが一番だろうけど」
キャティは大きく伸びをして、ウルは肩をグルグル回し首もコキコキと鳴らしている。獣人族の二人にとっては、相当窮屈だったのかもしれない。
そんな二人を横目に見つつ、ラルクは深いため息を漏らした。
「こんな面倒になるって分かってたら、あんな依頼無視していたんだがな」
「そんなこと言わないでよ。王妃様を助けられて、私はホッとしてるわ」
ラルクは文句を言ってるけれど、これは本心じゃないのよね。本気で嫌なら、無視するのがラルクだもの。憎まれ口は形だけで、ラルクはきちんと王妃様の事を考えていたし、実は到着が遅れた事を気にしていた事も私は知っている。
でもここはまだ城の前なのよ。誰が聞いてるか分からないのだから、余計な火種になるような事は言わないで欲しいわ。
「それよりプロトの依頼を済ませちゃいましょう」
「そうだな、冒険者ギルドにも行かねえと」
クラーロ王都にも、ラルクは昔来た事があるそうで。久しぶりだから変わってる所もあるかもしれないと前置きしつつ、私たちを案内してくれた。
プロトの実家は王都有数の商会だけあって、その店舗もかなり立派なものだ。プロトの家族に会えるか分からなかったから、荷物は店員に預けてしまおうかと思ったのだけれど、ちょうどプロトの兄だという人が店に出ていたので直接渡す事が出来た。
「ありがとうございます。弟がお世話になったんですね」
プロトのお兄さんは、本当に血縁があるのかと疑問に思うほど細身で、眼鏡の似合う知的な印象の人だった。けれどプロトとは正反対の見た目でも、兄弟仲は良かったらしい。
弟思いのお兄さんは快く依頼完了のサインをしてくれただけでなく、提携の宿まで割引価格でとってくれて。さらに港までの護衛依頼も指名してくれたから助かってしまった。
してもらってばかりなのも何なので、私たちも広い店舗に散らばってそれぞれ買い物を楽しんだ。
旅に必要な物資も補充出来るから、本当についでだったのだけれど、会計時にはさり気なく値引きまでしてくれたから頭が上がらなかったわ。
そうしてホクホク笑顔でプロトのお兄さんに別れを告げて、私たちは商会を出ると冒険者ギルドへ向かった。
そこで王都に来るまでに狩った魔物素材の換金もしたのだけれど、諸々の依頼完了の報告をした所で驚くような話をされた。
「え? これも指名依頼なんですか?」
「はい、そうなってますね。それでエルメさんは、特二級になります」
「特二級……?」




