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118:クラーロ国王の依頼

お待たせしました!投稿時間遅くなってごめんなさい!

 ウルたちの恋話とか色々あったけれど、クラーロ王都までの道のりは順調そのものだった。王都に着けば、しばらくはウルたちと別れるのだと思うと寂しくなるわね。

 だからというわけではないけれど、ほんの少しゆっくりと進む事にして。魔物討伐という寄り道もたくさんしたから、旅費もだいぶ稼ぐ事が出来た。


 ラルクによれば、海を渡る船代はかなり高額らしい。ギルド長のおかげでまた拠点変更の手続きも出来るように準備してあるけれど、それもセルバ国へ着いてからになるから、クラーロを出てしまうと私はセルバまで冒険者として活動出来ない。

 だから今のうちに出来るだけ稼いでおきたかったの。特級冒険者のラルクはどの国でも依頼を受けれるけれど、頼るのは嫌だもの。セルバまでは依頼を受けず出来る限り早く進もうと、ラルクと話して決めていた。


 でももう少し早くクラーロ王都に来るべきだったのかもしれないと、市門に着いた時に思った。順調だったはずの旅が、そこで一変してしまったから。


「君はエルフ族だな。国王陛下が冒険者ギルドに出されてる依頼は知ってるか?」

「ああ、精霊樹の雫のことだろう。一応俺たちも、それを届けに行くつもりだが」

「本当か! それならこのまま城へ同行してくれ!」


 精霊樹の雫はエルフ族からすれば、貴重というわけでもない。だから数は少ないながらも、里の外にも出回っているらしい。

 そうラルクが話していたから、もしかするとクラーロ国王の元にもすでに誰かが精霊樹の雫を献上しているのではと思っていたの。だからこそ、私たちはそう急がずにここまで来た。


 けれど、どうやらそれは違ったみたいで、触れを出されてからもう二ヶ月近く経つのに、未だ献上されていなかったらしい。

 クラーロ国王はよほど切羽詰まっていたのか、衛兵に命じて王都へやって来る者の中に精霊樹の雫を持った者がいないかを確認させていたみたい。

 そこへエルフ族のラルクが通りがかり、持っていると話したものだから大騒ぎになってしまったわ。こんな事なら、もう少し早く来れば良かったかもしれない。


 衛兵たちはすぐに馬車を用意して、私たち四人を問答無用で城へ連れて行った。ウルとキャティは、自分たちは無関係なのに行っていいのか気にしていたけれど、拒否出来ないのだから仕方ないわよ。せっかくだもの、四人で報酬をもらいましょう。

 本当なら、王都に着いたら真っ先に冒険者ギルドに行って、ウルたちとも別れて。そこから城へ連絡してもらっている間に、プロトたちからの荷運び依頼を済ませてしまおうと思っていたのに。予定が台無しだわ。


 とはいえ、クラーロ国王がそこまで焦って精霊樹の雫を求める理由も謁見してみて理解出来た。


「よく来てくれた。精霊樹の雫を持ってきてくれたそうだな」

「ああ、これだ」


 私たちが通されたのは城の中心にある謁見の間ではなく、さらに奥まった所にある国王の私的な応接室だった。

 そこに宮廷薬師を伴って現れた当代のクラーロ国王は、数年前に先代が急死して即位となったため、まだ若いのだけれど。常ならば精悍であろうはずのその顔は、憔悴しきって何とも痛々しかった。


 ラルクが差し出した小瓶を、宮廷薬師が受け取り中身を確認した。


「陛下、確かにこれは精霊樹の雫です」

「そうか。これで妃は治るのか」

「はい。ですがエルフ族の方がいらしているのです。可能であれば、協力を頼まれた方が確実かと。我々が扱って失敗しても、数がありませんので……」

「そうだな。ラルクスと言ったか。少し手を貸してくれるか」

「それは話の内容によるな。これが必要なのは、王妃が伏せってるからなのか?」

「そうだ。手を尽くしたが、どうにもならんのだ」


 クラーロ国王には、王太子時代から溺愛している王妃がいた。けれどその王妃が、一年前に原因不明の病に倒れてしまったそうだ。

 神殿の神官が使う治癒魔法は、怪我は治せるけれど病気は治せない。病に関しては、薬師が治療する事になる。

 クラーロ王国にも有能な宮廷薬師たちがいるから、彼らがありとあらゆる方法を試したのだけれど、どうにも改善しなかったために、精霊樹の雫を使おうとなったのだとか。


「まあ一応診てやるよ。薬が作れるかはそれからじゃないと断言出来ないが」

「それでいい。頼む」


 ラルクの返事に、国王は心底ホッとした様子で微笑んだ。せめて材料さえ手に入ればと思っていた所に、エルフ族自身が来たのだもの。それは希望も持つわよね。


 ラルクが薬を用意する間、私たちはずっと城に留められた。表向きは歓待したいとの事だったけれど、きっとこれはラルクに断らせないための人質の意味合いもあったんじゃないかしら。

 まあ逃げようと思えばいつでも逃げられるし、豪華な客室で三食昼寝付きを堪能したおかげで旅の疲れをゆっくり癒せたからいいのだけれどね。


 幸い王妃の病はラルクにどうにか出来るものだったから、そう長い間拘束されなかったのも良かったわ。

 薬を飲ませてもすぐに治るわけではなかったけれど、城に連れてこられて一週間も経つ頃には謁見を許されるほどには回復したようだった。


「ありがとう、あなた方のおかげで助かったわ」


 未だベッドの上ではあるけれど、きちんと身なりも整えて王妃は私たちを部屋に招いた。命の恩人だからと直接お礼を言いたかったそうだ。

 ずいぶん痩せ細っていたけれど、血色は良いし体調は良さそう。今の状態でも儚げな美人といった感じだから、クラーロ国王が夢中になるのもよく分かるわ。


「ごめんなさいね、無理をさせたんじゃないかしら。ラルクスから、陛下がみなさんを城に閉じ込めてると聞いたわ」

「いえ、おかげさまで快適に過ごさせて頂いてますので」


 ラルクったら、王妃様に何を言ってるのかしら。確かにウルとキャティはそろそろ体を動かしたいと言っていたけれど、病み上がりの人に聞かせる話じゃないでしょうに。文句なら直接国王に言えばいいのよ。


ちょっと中途半端な感じですが、長くなりそうなので明日に続きます。

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