5.善行令嬢って何なんでしょうか?
『悪役令嬢(破滅する)』は相変わらず私の頭の上に浮かんでいる。
これは変わることは無いのだろうか。
ルナリア様やジュリア様は日に日に逞しくなっていくけれど、あの2人の上に浮かんでいる文字も変わらない。
「何やら考え込んでいるのかな、ルイーゼ」
「シルヴィール様」
そうでした。今日は月に一回の王子様とのお茶会の日でした。
『攻略対象 第二王子( ちょろい )』を頭の上に浮かべたシルヴィール様は、優雅に紅茶を飲んでいる。
「最近はダルクとよく一緒にいるみたいだね」
「ええ。友人の鍛錬を手伝ってもらっているのです。」
「ああ、フォレスター令嬢とレインディス令嬢だね。最近は悪い噂も聞かず、美しくなったと評判だね。それに君とダルクが絡んでいたのか」
貴族令嬢の中でも、メルディス様式鍛錬法が流行り出しているらしい。
負荷を考えた令嬢向けの鍛錬法であるため、ふくよかな貴族令嬢はこぞって真似をしているとか。
「ふふふ。体を鍛えれば心も鍛えられますからね」
願わくば、破滅を回避して、三人で穏やかに過ごせるのが一番ですけど。
「最近、ピクセル・ルノー男爵令嬢と知り合ってね」
ピクセル・ルノー様。
ああ、あの『主人公( あざといヒロイン )』の彼女ね!
「彼女は面白いね。独特な価値観を持っていて、一緒にいると色々と刺激になるよ。君も仲良くなれるんじゃないかな。」
「そうですね。ふふふ」
シルヴィール様はよほどルノー様が気に入ったのか、楽しそうに彼女の話をしている。
でも、私ははらはらして仕方ないのですが。
だって、王族相手に木の上から落ちてみたり、手作りのお菓子を渡したり、庭で昼寝をしたり…
ああ、聞いただけで胃に穴が開きそう……。
善行令嬢として、彼女に教えてあげた方がいいのかしら。
あなた、不敬罪で死にたくなかったら今すぐ行いを改めなさい!!と……!!
そうよね、善行令嬢として、放っておけないわ!!
「シルヴィール様!私ルノー様とお話してみますわ!!」