2.『主人公( あざといヒロイン )』って何なんでしょうか?
まず、『悪役令嬢』なんて聞いたことないし、職業なのかしら?
小さい頃から頭の上に浮かぶこの文字は私にとっては不吉にしか思えなかった。
なんせ破滅するって書いてあるし。
悪役って、何?
目に見えない不吉な力に吸い寄せられるのが恐ろしくて、とにかくいい子になろうと子ども心に思ったのよね。
勉強や剣術も人一倍頑張ったし、お妃教育も必死に耐えたわ。
社交界だって人脈を増やし、とにかく『悪』にはならないよう『善』になることをひたすらしてきたわ。
目指せ善行令嬢よ!!
なのに…この文字は変わらない。
いいえ、大丈夫よルイーゼ!!まだ諦めないわ!
たとえ父親に『悪役令嬢の父(没落する)』
たとえ母親に『悪役令嬢の母(逃げ延びる)』と書かれていようが!!
って言うかお母様…お父様を捨てて逃げるってことかしら……。
「ルイーゼ様、到着いたしました。」
『侍女その①(お金大好き)』が頭の上に浮かんでいる侍女のマリィに言われ、はっとする。
そうだったわ、今日は王立学園への入学式だったわ。
真新しい制服に身を包み、馬車から降りる。
ここから新しい生活が始まる──。
ごくりと喉を鳴らし、学園の門へと一歩踏み出し…た瞬間、思いっきり人にぶつかられる。
「痛っ!!」
吹っ飛ばされよろめく私と、地面にしゃがみこむぶつかってきた女生徒。
ピンク色のふわふわした髪に緑色の瞳。あら、可愛らしい。
と見惚れると同時に…
『主人公( あざといヒロイン )』
と頭の上に浮かんでいる。
主人公?何のこと?
聞いたこともないような言葉に頭を傾げながらも女の子に手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?ごめんなさいね、怪我はないかしら?」
善行令嬢ですもの、笑顔は崩しませんわ。
例えぶつかられた所がめちゃくちゃ痛くても!
「ふぇ?あれ?怒らないの?」
ぶつぶつ呟きながら体を起こした彼女は、そのまま謝罪をして風の様に門の中へ消えて行った。
一体何だったのだろう……。