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第三話:神様との御話し合い

こんな状況に追い込んだやつ、異世界の神に、滅茶苦茶むかついた。こんな面倒事に巻き込みやがって!

ジーク様は、私の小さな囁きのような呼びかけに、直ぐ応えてくれた。

“皆との面会は上手く行ったようだな!?”

“そうですね。”私は苛立ちを抑えた黒い満面の笑顔で頷いた。

ジーク様は、不穏な空気を感じ取り、少しビクッとした。

“そうですね。”私は圧を込め、笑顔を深めた。“色々と聞きたいことと、言いたいことがございまして、ご足労頂きました。御出で頂きありがとうございます。”

“そ、そうか!......”ジーク様は引きつった顔で、少し、後ろに下がった。

“私が今回呼ばれたのは、患者の心の治療のためだと...思っていたのですが...それだけでは、今回問題になっている状況の改善・解決にはなりませんよね!”

ジーク様は、冷や汗を流しながら、徐々に後退して、私から距離をとった。

“お話が違うようですけど。ご説明して頂けますか?”冷ややかな笑顔で目に圧を込め、目線を下に向け、座るように指示した。

ジーク様は、その場に正座する形で座り、私を見上げ、“申し訳なかった。でも、私も、どうすればよいか分からず、途方に暮れていたのだ。そんな時に、そなたの世界の神が、そなたを推したのだ。私は藁をも掴むつもりで、そなたを呼び出し、こちらに連れてきたのだ。”

と、土下座をする勢いで私に謝った。

(はぁ~っ、あんたは神様でしょうが!? たかが、人間の私に頼るなよ!しかも、あんたは違う世界の神様で、私には縁も所縁もない。私があんたに義理立てする理由もない!自分の世界の事は自分達で片をつけるべきだろうが!しかも、私の世界の神様も、多分だけど、こいつの相手をするのがうっとおしくなって、押し付けてきたんだろうし。ふざけんな!八つ裂きにでもしないと気が治まらないな)。

私は異世界の神様を威圧し、言葉にはしなかったが、怒気を露にし、態度だけでも駄々漏れ状態で見下ろしていた。五分くらいそうしていたが、その間、神様は、ただ怯えた目で私を見上げるだけで、頼りなさげに震えていた。

 (こりゃ、ダメだ。こいつ、使いものにならない。こいつには、神様なんて務まらない。上に立つ器量も、能力も,気概もない。ない、ないづくしで、こんなのに任せたら、破滅しかない。誰だよ、こんなのを神様にしたのは!確かに人間も悪い。しかし、この神のせいで、多分、全てが悪化したんだろう。手助けのつもりで、余計なことをして、かえって悪化させたんだろう。これから、確かめなきゃ、断定出来ないけど...でも、確かめるのも面倒!もう、帰りたい。でも、この手のタイプは、放置するともっとヤバイ面倒事を押し付けて来るんだよな。しかも、こいつのこの頼りきった目、全力で負ぶさってくるつもりだ。こいつは、ピラニアかヒルだな。厄介なのに見込まれてしまった。私の世界の神も、多分だが、長い間、こいつに負ぶさってこられて耐え切れなくなったんだろうな。そして、他の神々も...しかし、神でもどうにもならないのに、普通の人間である私にその役を押し付けてくるのは余りにも酷いんだけど。でも、ここで私自身が契約不履行で回避して地球に戻れても、この役が他の人間に回されるだけだし。そうなると、寝覚め悪いし。そして、益々悪化して、終いにはこの世界だけではなく、地球にも影響してくるだろう。後回しにするより、今動くほうが勝算が見込める。それなら、腹を括るしかないな。でも、こんな面倒事を押し付けられたのだから、その分はきっちりと落とし前をつけてもらいましょう)。

私はふ~っと長く息を吐き、威圧を少しだけ緩和して、優しく微笑んだ。

それを見た神様は、緊張を少し解き、震えなくなった。

それじゃ、交渉と行きましょう。

“このままでは、話しづらいので、そちらで座ってこの続きをしませんか?”

私は圧を完全に解き笑顔で、応接間セットが置いてある方に促した。ジーク様は,あからさまにほっとしたように、緊張を解き、ソファの一つに腰掛けた。私は、彼の向かい側のソファに腰掛けた。

“ジークフリード様、これからは、ジーク様とお呼びしても宜しいですか?”

“......そ、そなたがそう呼びたいのであれば、わ、私はかまわない。”

“快く承諾頂けて、ありがとうございます。”にっこりと笑いかけて、

“それでは、本題に入らせて頂きますが、外に音が漏れないように、私達の周りだけ結界を張って頂けますか?”

ジーク様は、頭を上下に何度も振った後、上目遣いで私の様子を伺いながら、私のお願いを叶えていく。

見えないけれど、何かがまわりを囲んだ。空気の変化や流れというか、何かの圧を感じた。

“ジーク様、私のいた世界には魔法が存在しないことをご存知ですよね。”

彼は神妙に頷く。

“それに、魔物も、精霊も、存在しない事もご存知ですよね。”

ちょっと、冷や汗をかきながら、頷いた。

“それらが、この国の王子の治療にあたって、多大に関わっているのはご存知ですよね。”

汗が酷くなってきた。

“そして、それらが存在していない所から来た私が治療するのに、それらが障害になるのはもちろんお分かりですよね。”

(もう泣きそうだな。それはそうだな、なんせ、言葉にも目にも圧を加えて話しているんだし。)

“それについてのジーク様の見解をお聞きしたいのですが?”

“それは、......”

目が泳ぎだした。もう一息だな。

“もう一度、お伺いしますね。私の世界には存在しないもので、治療の障害または邪魔になるものに対しての、ジーク様の見解をお聞きしたいのですが。”

“そのことに関しては、出来る限り協力しよう。”

“出来る限りとは、どのくらいでしょうか?”

私は徐々に、圧をかけ、黒い笑みを深めていく。

“そ、それは、そなたが必要な事で、理にかなった事なら、私の力を貸すということだ。”

“それは、ジーク様が納得して頂いたことであれば、私の要望を聞くということで、間違いございませんか?”

“間違いない。”

私はに~っこりと微笑みながら、(言い逃れは赦さない!)と言外に含めて威圧した。

ジーク様は、引き攣りながら後ろに下がろうとしたが、ソファに座っていたので、それも出来ずに、また震えだした。

私は益々、獲物を徐々に追い込むように、黒い笑みを深めた。


     自分の状況を逆手にとって逆転させましょう!


“ジーク様、最大限に協力して頂けるということですので、それについて話し合いたいのですが、宜しいですか? (もちろん、文句なんかないよな!)”

言っている言葉は丁寧だが、相手に否と言うことを言わさずに話を進めて行く。

ジーク様は、ただ頷くばかり。

“ここに来る前にしたお願いで、私は、全ての攻撃を無効に出来るのですよね!”

ジーク様はヘッドバンガー人形に成り果てた。もう、ず~っと頭を振っている。

“それは、大変有難いことですが、先ほど現地の方からの見聞きしたことから鑑みるとそれでは足りないことが分かりました。その足りない分をジーク様に補充して頂きたいのですが。宜しいですか?”

ぶんぶん。まだ、振っています。しかし、そこで、ハッとなって、恐る恐る上目遣いに私を見ながら、“足りない分とは?”と聞いてきた。

“王子は、人外の能力、魔力をお持ちで、この世の誰一人、彼と対等になれるものは存在しないようです。その魔力は、側に居る人たちに多大な影響を与え、彼の側に居ることを困難にしてきたそうです。その為、彼はいつも孤独だったみたいです。”

私は圧を緩和して、悲しそうに、辛そうに、王子の現状を述べていく。そうすると、ジーク様も、辛そうな悲しそうな表情で、“そうだな。”と呟いた。

“その孤独感と彼の人外の魔力が、彼を追い詰めて、彼は負の感情に侵食されています。このままでは......彼は..彼の心は、......闇に飲み込まれるでしょう。”

私は悲痛な顔で、今にも泣きそうな顔で続ける。

ジーク様も苦しそうに呻いた。“そうなのだ。ここ数年で、彼の闇がとても大きくなってしまった。その闇は、封印されていた魔物にも影響を与える程大きくなってきたのだ...彼の闇を少しでも和らげる為に、聖女を彼の元に送り出したが、ダメだったのだ。精霊や神獣を送りたかったが、人とそれらの隔たりがある為、それもできなかった。私は神でありながら、人一人救うことさえ出来ない。出来損ないなのだ。”

そこで、ジーク様は大粒の涙を止め処なく流した。

(この神様、精神年齢、8-10歳だな)。

私はジーク様の隣に腰を下ろし、彼の肩に手をかけ、“ジーク様は出来損ないではないですよ。自分で出来ることを頑張ったのですから。”と優しく元気付けるように微笑みながら言った。

ジーク様は、私に縋りつき泣き出した (間をとって、9歳にしておこう)。私は彼のしたいようにさせ、頭をい~こ、い~こと撫でながら、彼が落ち着くのを待った。しばらくして、彼の涙も出尽くしてから、彼は恥ずかしそうに顔を上げ、私を見つめて私の言葉を待っていた (再教育が可能かも)。

“ジーク様も、現地の人々も、一生懸命に頑張ってきたんですね。それでも、状況は悪化するばかり。辛かったですね。”

ジーク様の目が揺れた。

“そのようなお手上げの状態でも諦めずにがんばれるのは、とても素晴らしいことだと思います。そのような頑張りやの皆さんには、私も出来る限りのことをしたいと思います。しかし、私は只の人間ですので、やれることにも限界があります。そこで、ジーク様のお力をお借りしたいのです。”

“何なりと言って欲しい。私に出来ることがあれば、何でもする。”

ジーク様の目には私に対する敬意が映されていた。

“ありがとうございます。とても心強いです。”

この後、ジーク様は、私の望み通りに力を分け与え、協力してくれたのだった (とても、素直な良い子ですね。これならば、伸びしろありで、なんとかなるかも)。


神様からの全面協力は取り付けたし、次は現地の人たちときちんと刷り合せしなきゃね。

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