ブリッツ・バード・エルロイ

　水門には鳩が│集《たか》る。餌付けを日課とする老人がいるから。

水門の塗装色は青で、通常は水面から20メートルの高さまで引き上げられている。豪雨や暴風といった自然災害の際に横幅47メートルの門で、迫り来る、押し寄せる水圧に抗っているため、塞き止める水門の青のおよそ中間地点、色褪せたラインが河の深さを物語る。

　│生《せい》あるものがいずれ水へ帰るとしても、群青色の河に戻りたいとは思わない。鳩が鳴き、旋回しても、群青色越しに見る空はエグみが強いだろうから。

　鳩に餌付けする老人が亡くなっても、一子相伝の様にまた新たに鳩にパンを撒く老人が現れる。

　習慣でもって生物の飢えを満たす、海抜のない愛と言ったら。

　僕は吐き気を催して、永遠に空腹のまま人生を終えてしまうよ。