旅人の肖像
素敵な横顔だ。
崇高なる悩みを携えた、歪んだ旅人。
白々しいまでの、絶体絶命の常套句。
救えない、膨れ上がったその姿に投影されるのは飽食の遺物だけ。
わらえない、身の丈もある袋を引き摺る様は欲まみれのイナゴの果て。
血気盛んな悔恨を貫き通し、辿り着くのは遺影の席。
語り継げ、そして知り尽くせ。
またとない機会を捨てては行けぬ。
その素敵な横顔は、明日は何を語る?
清々しいまでの、他力本願の常套手段。
見初める者はいるか、恋い焦がれる者はいるか。
羨望の眼差しか、妬ましい影を纏うのか。
荒れ狂う海は、巧みな語り口にて目の前に現れよう。
吹き荒れる風は、軽妙な口ずさみで耳元に現れよう。
汚れも清らかさも知らない外套掛けて、歪んだ旅人は後ろ向きで先を急ぐ。
今、狂った波が立ち上がる!
今、荒れた風が吹き抜ける!
見えるのか、名前も思い出せない住人は、蠢く命を抗い続ける。